January 3, 2010

自衛は無意味ではない!

ちょっと一部でまだ続いている強姦に関する話題だが、「あなたは悪くない」というブログで、『自衛』を主張したって無意味ですというエントリーがあって、そりゃ違うだろ、と思った。

そんな書き方をすると、それこそ「素人は黙ってろ」と言われそうなのだが、犯罪の被害者になったことがなければ防犯について語ってはいけないということはないはずで、自分の経験を生かしたこと以外は語る価値はないというのもかなり傲慢な言い方のような気がする。

と、前置きをした上であえて言わせてもらうなら、カカシは性犯罪の被害生存者である。英語でいうならサバイバーというやつだ、ということを告白しておこう。

信用できると思っていた友人や恋人から「なんで隙を見て逃げなかったんだ?」とか、無理矢理連れて行かれたのに「そんな時間になんで一人で男の部屋にいったりしたんだ?」とか反対に責められた経験もある。届け出た警察でも、屈辱的な犯罪の過程を根掘り葉掘り聞かれた末に、取り調べの刑事から「浮気を隠すために強姦話をでっちあげたんだろう。」と一笑に伏された経験もある。

だから私は完全なる部外者ではない、その私が自衛は大切だといえば多少は重みがあるのではないかと思う。

上記の「あなたは悪くない」のトピ主さんは、自衛を提唱する人は強姦神話を信じているのではないか、という質問をしている。

夜道、一人歩き、見知らぬ人による犯行。 「挑発的」な服装をした被害者が狙われる。

加害者は、性欲が異常な、ごく限られた小数の人間。
ほんの出来心で、“つい”かっとなって性欲が抑えられずに犯行に及ぶ。

よって、彼らの性欲を刺激しないようにすればいい。
と思っているのではないですか?

私はだいたい強姦を「性犯罪」と呼ぶこと自体が間違っていると思う。強姦はセックスではない。強姦は暴力であり冒涜である。強姦魔の動機は性欲云々ではなく、相手を徹底的に支配したいという欲求から来る。だが、そういう奴は決して自分は強くない。自分の力に自信がないからこそ、弱いものを狙うのだ。

トピ主自身も、強姦の被害に合うのは、派手な格好をしている人というより、おとなしそうな人、被害にあっても抵抗しそうにない人、などが狙われると書いているように、加害者は被害者を非常に気をつけて選ぶ。だから、加害者の標的にならないためにはどうすればいいのか、という対策を考えることは無意味ではないはずだ。

私は自分自身の体験から考えて、確かに回りの人から「なぜ〜をしなかった?、なぜ〜をした?」と問われたことは悔しかったが、それでも後になって冷静に考えた時、自分にも出来ることがあったと思える。その時はその術を知らなかっただけだ。

それは決して被害者を責めるとかいうことではなく、実際にそういう立場になった時、犯罪から逃れる術を考えておくことは建設的なことだ。それを「狙われたら最後、逃れる術はない」とか「自衛などで防げるわけがない。」とかいう言い方は、これから被害にあうかもしれない人たちに対して、非常に無責任なアドバイスだと思う。

たとえば、こんなシナリオを想像してもらいたい。

ある若い女性の家に夜10時を過ぎた頃、レストランに勤めていた女友達のA子から電話があって、もうすぐ仕事がひけるから一緒に飲みに行かないかと誘いがある。女友達の同僚でこの女性も顔見知りの男性がおごってくれるとの話であった。

指定の飲み屋に行くと友達はまだ来ておらず、おごってくれるという彼女の同僚の男性が一人で飲んでいた。やってきた女性を見てかれは「A子ちゃんは、まだ仕事が終わらないから先に飲んでてと言ってたよ」と彼女からの伝言を伝えた。しかし20分くらいしても彼女が来ないので、その男性は「電話してくる」と言って席を立った。

戻って来た彼は、「いつ終わるか解らないから先に始めててと言っていた。腹へったから別の場所にいこうぜ。移ってから彼女にまた連絡すればいいから。」と言った。若い女性は彼の車に一人で乗りこんだ。しかし、行き先は別のレストランではなかった。

さて、この話が実話だったとしたら、「あなたは、、、」のトピ主さんが言うように、そんな解りきった自衛など誰でもしていると言う主張は正しいといえるだろうか? 

この女性の行動はちょっと軽卒だと言えないだろうか?

若い女性が夜遅くに飲みに出かけるという行為自体が問題だとは言わないまでも、女友達の同僚という男性のいうことを完全に信用してしまうということには疑問を持つ。

この女性はこの男性とは単なる顔見知り程度の関係。信用出来る相手だと判断する根拠はない。なのに、彼の車に一人で乗ってしまった。後で友達に連絡するという彼の言葉を信用してしまった。いや、それをいうなら、彼は席を立った時、本当に友達に電話したのだろうか? この時、この女性が自分で彼女に電話していたら? いや、彼女が来るのを待ってから場所を変えようと言い張っていたら?

もうお察しがついたと思うが、これはカカシの身に実際に起きた事だ。机上の空論でもなんでもない。私は決して自分が悪かったとは思っていない。加害者が絶対に悪いと思っている。だが、犯罪が起きる前の段階で、それを避ける術はあった。彼の車に乗った後でも、逃げる機会はいくつかあった。しかし私にはそれが解らなかった。相手の男性を怖いと感じながらも、私にはまだ自分が強姦の被害者になりつつあるとは信じられなかった。いや、信じたくなかった。だからおとなくし言いなりになれば傷つけはしないという相手の言葉を信じたりした。

後になって賢くなった私があの時の私に「カカシ、その男には下心があるよ、付いて行っちゃ行けないよ、信じちゃ駄目だよ」とアドバイス出来るものならしたいと思う。無論今となってはそれは無理だ。しかし、同じような目にあいそうな別の若いお嬢さんたちに、そういうアドバイスをしてあげることの何がいけないのだろう?そうすることが何故被害者を責めるということになるのだろうか?

私を襲った男は、最初から私を狙っていた。私の女友達を使って私をおびき寄せた。用意周到に犯罪を計画した悪どい奴である。人間のくずである。

しかし、私がうぶでなかったら、もう少しそういう悪い奴の手管を見抜く術を知っていたら、そいうことを教えてくれる大人が回りに居たら、大事は防げたかもしれない。

トピ主さんは、「考えられる限りの自衛は誰だってしている。」というが、果たしてそうだろうか?

例えば、たとえ刃物や銃器で脅されても、おとなしく攻撃者に付いていったりせず、相手をどついて逃げるとか、運転席に座っている時に運転席側から人が乗って来てカージャックされそうになったら、自分はとっさに助手席側のドアをあけて逃げるとか、普通の人は普段考えているだろうか?

自衛論者のふたつのブロガー(narusasaの日記オタク入門中)に対して上記のトピ主は、「あなたは、性犯罪をなくしたいですか?それとも性犯罪を増やしたいですか?」と問いかけているが、私には自衛を提唱することが性犯罪を増やすことになるとという前提は受け入れられない。

強姦をしようなんていう人間の欲求は相手が自衛をしているかどうかでは変わらない。ただ、自衛をしている人が増えれば犯罪者の行動範囲は限られる。極端な話だが、アメリカでは小銃所持が合法になった地区では強盗や強姦などの犯罪が極端に減ったという例がある。誰が武装しているか解らない場所は犯罪者は避けるからである。

私にはそれが悪いことだとはどうしても思えない。

そこで、酷な言い方かもしれないが、私はあえて彼女にききたい。

あなたは犯罪の犠牲者を減らしたくないのですか?

January 3, 2010, 現時間 2:33 PM

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コメント

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下記投稿者名: Sachi

Pz-4 "犯罪が起きる前の段階で、それを避ける術はあった。"それは激しく後出し。2010/01/06

だから、後出しにならないように、前もって予防の方法を考えておこう、という話なのだが。カカシ

上記投稿者名: Sachi Author Profile Page 日付 January 5, 2010 5:39 PM

下記投稿者名: Sachi

HauntedHotel 銃所持が合法になった地区では強盗や強姦などの犯罪が極端に減った<その理論でいったら米国の犯罪率は世界で見ても低くなってそうなもんだけど。市民が容易に銃を持てるって事は犯罪者も容易に銃を持てるって事やろ 2010/01/06
akira-2008 性暴力被害, 自衛論 今回「自衛論」が、どのような文脈で現れてきたかに注視。文脈から切り離して「自衛論」の是非のみを問うても意味はないでしょう。体験は個別なものであり、それぞれの方法論は一般化できるものではないと思います。 2010/01/06
parallel-world 社会, 犯罪 「自衛論者の語る自衛は無意味、無価値、罪悪」でいいんじゃね?/「小銃所持が合法になった地区では強盗や強姦などの犯罪が極端に減ったという」ソース希望。小銃を所持してれば逆に強盗強姦が容易になりそうだが。 2010/01/06

上記投稿者名: Sachi Author Profile Page 日付 January 6, 2010 12:16 AM

下記投稿者名: Sachi

銃について、何も知らない人が知ったかぶりは言わない事。銃が多いと犯罪が減るを参照されたし。 カカシ

上記投稿者名: Sachi Author Profile Page 日付 January 6, 2010 12:16 AM

下記投稿者名: Sachi

おっと、リンクを忘れた。これを参照のこと。カカシ

上記投稿者名: Sachi Author Profile Page 日付 January 6, 2010 12:17 AM

下記投稿者名: Sachi

k-noto3 関係ないけど 銃の所持による犯罪云々という学門はイデオロギーで立場が分かれるからあまり信用できん。全米ライフル協会から支援されてる学者は銃規制に傾くようなことは書かない。論文の背景が知りたい。 2010/01/06

上記投稿者名: Sachi Author Profile Page 日付 January 6, 2010 6:25 AM

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