September 28, 2008
当初共和党下院が金融救済法案に反対した理由
コメンターのhatchさんからこんな質問があった。
とりあえず、苺さんに確認します。 ブッシュ大統領の公的資金投入に反対しているのはどちらですか? 私の得ている情報では、共和党の下院です。 苺さんは公的資金投入には賛成でしたよね。 どう思われますか?
経済はカカシの専門ではないが、これについてミスター苺が非常に解りやすく説明してくれているので、それをを紹介したいと思う。
マケインがワシントンDCに乗り込んでくる前に、上院と下院の民主党員の間で、金融救済法案については、ある程度の合意ができていたことは確かだ。これにはホワイトハウスも共和党の上院議員の一部も参加していたらしい。
この合意の外枠はブッシュ大統領がポールソンとバーナンクの草案した緊急救済計画を民主党が受け入れる代わりに、民主党が押すいくつもの社会主義的な国内の福祉政策をホワイトハウスからゆすり取ろうというものだ。その内容はというと、、
- 失業保険至急の長期延長。よって再就職をしようという人が減る。
- 「住宅信託予算」(housing trust fund)と称して税金をACORNなどの過激派グループに横流しする。
- 国会議員より高い給料をもらっている人の給料に上限を設ける。
- 秘密裏にシェイルオイル開発の禁止を継続する。多数党リーダーのハリー・リードはこれを救済プランにこっそりとくっつけようとした。
- 政府による銀行の国営化などファシスト的な政策もろもろ。
上記の合意に参加していないのは、言わずと知れた共和党下院である。共和党下院は上院に比べて保守的であり自由市場を重視する。よって必然的にこの法案は頭から拒絶した。
しかし共和党下院に配慮をしている人などいない。それどころか誰も共和党下院の意向に耳を傾けようとさえしていなかった。マケインは、自分は上院議員で下院議員ではないが、共和党下院なくしてはこの合意達成は不可能であることに気がついた。下院では民主党が多数議席を握っているので、民主党だけで法案を通せないということはない。だが、共和党の合意なしで強引に法案を通した場合、うまくいかなかった時の責任がすべて民主党にかかってくる、それはまずい。民主党は自分らの法案に責任を持ちたくないのだ。
そこでマケインは、選挙運動を一時停止してワシントンDCに飛んで帰り、下院のメンバーと話合うという上院議員としての任務を遂行することが大事だと判断したわけだ。大統領候補になったら上院議員としての責任がなくなるというわけではないのだから、当たり前だが、選挙運動に忙しくて上院議員としての任務など頭にないオバマとは大違いだ。
下院の計画はそれなりに考慮に入れる必要がある。ものによっては市場回復に役立つものもあるだろう。だが、それらの対策をすべてひっくるめてみても、現在の住宅ローン市場の非流動性を解消することは出来ないだろう。
下院の法案の主軸は金融業界自身に有毒資産(the toxic assets)を買い戻してもらうことにある。そのために政府が有毒資産を 保証するというものだ。
共和党の提案は銀行の融資に連邦政府が拡大した保険システムを設立するというもの。これによって個人の住宅ローンを救うことになる。政府は金融業界を引きずり落としている有毒資産を購入する必要はなくなる。
共和党下院は資産利得税を二年間差し止めることを提案しているが、これは短期的な目で見ると逆効果になる。なにしろ有毒資産は業界が当初払った金額より価値は低いのだから、これを売っても利得どころか損になる。資産利得税が有効なら損による税金控除の対象となるが、それが差し止められたら損として税金控除が出来なくなる。
長期的には資産利得税は減らした方がいいのは当然だが、現在の危機を乗り越えるためには役に立たないと言えるだろう。
結果的には共和党下院も折れてどこかで妥協するだろう。そしてポールストンとバーンナンクの法案を民主党の社会主義的要求をかなり削った上でという条件付きで同意にたどりつくことが出来るだろう。
アップデート:さっき新聞の見出しを読んでいたら、金融救済法案が一応合意を見たとある。どのような内容になったのかまだ読んでいないので、読み次第あとでコメントしたいと思う。
September 28, 2008, 現時間 12:57 PM
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