February 23, 2008

人権擁護法など必要ない。差別は自由市場が解決する。

私は何度も差別をなくす法律など存在しないと主張してきた。差別をなくすためには差別主義の法律を取り除くことによって、後は市場に任せ、なるべく政府が介入しないことが一番いいことなのだと私は信じている。私は自由市場が差別をなくすことにつながるという話は下記のように何度もしてきた。

日本とアメリカ、共通する差別問題と落とし穴
なんで左翼は自分を左翼と認めないのか?

以前に私は人種差別にしろ男女差別にしろ政府が差別する(女性は何々の仕事についてはいけないとか、黒人はどこそこの公立学校に入学できないといったような)法律さえ取り除きさえすれば、あとは市場が解決してくれると書いた。これは女性や黒人の賃金が白人男性よりも安ければ人種や性別にこだわりのない雇用主が人件費節約のために優秀な黒人や女性を雇うようになるからで、他の企業が人件費が高すぎて経費がかさんで最初の企業と競争できないとなれば、こちらの企業も黒人や女性を雇うようになる。多くの企業が同じことをはじめれば黒人や女性の需要は高まり自然と給料も上がり、そのうち才能のある黒人や女性は白人男性と同等の給料をもらえるようになるというわけだ。

ただ、市場の解決には時間がかかる。市場が人種や男女の差別をほぼ取り除くまでには10年や20年は平気でかかるだろう。だからそういう状況を見ていると差別廃止の速度を早めるために誰かが手助けする必要があるという考えが生まれるのは十分に理解できる。これについて、例の自他共に認める左翼系リベラル、レズビアンフェミニスト(でも絶対マルクス共産主義者ではないと主張する)小山のエミちゃんはこのように語る

...こういう説明が経済学的に間違いであることは、過去エントリ...で解説している。簡単にまとめると、差別にはここでカカシさんが想定しているような「経済合理性の観点から言って非合理な差別」(経済学用語でいうと「選好による差別 taste-based discrimination」だけでなく、経済合理性にかなった「合理的(ここでは、それが正当であるという意味ではなく、行為主体の利益を最大化するという意味)な差別」(「統計型差別 statistical discrimination」)が存在しており、前者についてはカカシさんの言う通り市場による解決が理論上可能だが、後者についてはそれでは解決できない。

要するにだ、自分が嫌いな人間とはつきあいたくないという嗜好による差別は不経済なので、いずれは自由市場が解決してくれるが、ある種の人間は統計的に見て劣っているという偏見は市場では解決できないという意味。小山エミは女性の労働者を例にあげて次のように説明している。

統計型差別というのは、集団についての統計的情報をもとに個人を判断することだ。たとえば「女性は早期退職する可能性が高い」という情報が事実なら、女性より男性を優先的に採用したり、男性に優先的に将来的な出世に繋がるような経験を積ませたりすることは経営上理にかなっている。...そうした差別については放置しておいて構わないというならそれも一つの見解ーーわたしに言わせれば、公正性に欠ける見解ーーだが、市場に任せておけば解決するという論理は経済学的に言って間違いだ。

自分が賛同できない議論は「間違いだ」と決めつけてしまうのがエミちゃんの悪い癖なのだが、ま、この際そういう下らないことは無視して現実を考えてみよう。

先ずここで考えなければならないのは、エミちゃんのいう「統計的な差別」の元になっている統計が事実であった場合、雇用主が対象の集団を差別する権利は認められるべきだということだ。もしも女性が早期退職するという傾向が事実だった場合、すぐやめる人を訓練するのは不経済だから雇いたくないと考える雇用主の意志は尊重されるべきだとカカシは考える。

もちろん、女性だからといって誰もが早期退職をするわけではない。女性でも長期就職を望んでいるひとはいくらでもいる。それが単に傾向だけで判断されるのは不公正だというエミちゃんのいい分は理解できる。しかしながら、私はこういう統計的な差別もいずれは自由市場が解決すると考える。何故ならば、どの経営者も全く同じ動機で従業員を雇うとは限らないからだ。

新しい零細企業で企業自体がどれだけ長持ちするか分からないようなところなら、短期でもいいから有能な人を安く雇いたいと思うかもしれない。そういう雇用主なら若い女性を雇うことは多いにありうる。または子育てを終わらせて長期にわたってできる仕事をさがしている中高年の女性なら結婚妊娠による退職の恐れがないため雇われる可能性は高くなる。年齢差別でスーパーのパートのおばさんくらいでしか雇ってもらえない中高年の女性は多少給料が安くてもこうした企業での就職を歓迎するだろう。

私のこのような考えは現実を無視した卓上の空論であり全く間違っているという人は、自分こそ現実を見ていないとカカシは言いたい。

最近の旅客機や銀行で働く女性の容姿や年齢層をみてみれば、20年や30年前とはかなり違うことに気付かれた人は多いはずだ。昔は容姿端麗で妙齢の女性だけしか雇わなかった航空会社や銀行だが、最近のスチュワーデス(最近は機内乗務員と呼ぶのかな?)にはかなり昔は美人だったかもしれないといった風の人が結構多い。これは無論ある程度歳のいった従業員が解雇された時に年齢差別を理由に訴訟を起こしたりしたことが直接の原因だったといえばそうかもしれないが、安い航空運賃を競い合って航空会社同士の競争が激しくなるにつれ、若くて美人の女性ばかりを雇う余裕が経営者にはなくなってきたということのほうが現実だ。

カカシが20代の頃はスチュワーデスといえば女性の職業としては花形だった。(カカシは美貌や才能では決して劣らなかった(?)のだが、いかんせん背が低かったため、涙を飲んであきらめた。笑)しかし2008年の現在、若くて美しい女性が出来る仕事はほかにいくらでもある。それに乗客も昔のように金持ちのエリートばかりではなく、カカシのようにA地点からB地点までなるべく苦労せずに無事につければいいと思ってる働き蜂が大半だ。そんな人間にはスチュワーデスが若いとかきれいだとかなんてことはどうでもいいことだ。

銀行の窓口にしてもそうだ。昔は高卒でかわいい女の子たちが雇われたものだが、最近は子育ての終わった中高年の女性がパートで雇われることは結構ある。カカシの高校生の同級生なども大手銀行で窓口をやっているくらいだ。

これは若い女性は短期で退職するという統計的事実から来る女性の雇用問題を長期就職が期待できる中高年の女性が補うという形で市場が解決したいい例である。

また、1980年代のバブルの時期に、日本企業は世界にずいぶん広く事業を進めた。当時日本国内では女性蔑視がひどすぎてまともな仕事につけなかった日本女性たちは海外へ脱出した。日本相手に商売をしたい海外企業は日本語がはなせる教養高い日本女性を競って雇った。おかげで日本女性は外資会社の従業員として日本企業の男性ビジネスマンと同等に交渉する立場にたった。

海外へ進出した日本企業が雇った地元の職員のなかにも日本を出て海外で暮らしている日本人女性が多かった。もともと日本人だから日本企業のやり方には慣れてるが、日本並みの給料を払わず地元の給料で足りるということで、海外在住の日本人女性は日本企業にとっても重宝な存在だった。つまりだ、女性は短期で退職するから雇わないという統計的な理由での差別は、このように別な形で市場が解決してくれたということである。このように海外で日本人女性や外国人女性と同等に働いた経験のある日本人男性たちによって、女性への偏見はかなり減ったのではないだろうか?それが日本国内において女性の地位が向上することに結びついているといえないだろうか?

これは決して短期で起きたことでも完璧な形で起きたことでもない。まだまだ日本において男女は同等とはいい難い。しかしながらこれに政府が介入することによって早期にもっと良い結果が生まれるはずだという考えには、政府の介入が市場よりも良い結果を生むという根本的に誤った考えがあるのである。

なぜ差別問題に政府が介入することが害あって益なしなのか、話が長くなるので続きはまたこの次。


February 23, 2008, 現時間 4:20 AM

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» 自由市場は「統計型差別」を解決できるのか/苺畑カカシさんへ2 from macska dot org
昨日書いたエントリへの返答を苺畑カカシさんからいただいた。わたしは彼女のブログを定期的にチェックしているわけではないので前回自分について書かれていることにしばらく気付かなかったのだけれど、カカシさんは即座に反応してくださったようだ。内容を読むと、これま... [Read More]

トラックバック日付け February 25, 2008 9:34 PM

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下記投稿者名: scarecrowstrawberryfield

なぜかトラックバックはないが、左翼系リベラルのレズビアンでフェミニストの小山エミから反論があったので、気になる点だけちょっとコメントする。

私は常に雇用主や経営者が偏見に満ちた行動をとる権利は保証されるべきだと考えている。それを解決するのは法律ではなく市場であるべきだと考える。つまり、偏見に満ち満ちた企業は社会が制裁すればいいのである。

スチュワーデスやパートのおばさんや海外在住の女性の件については、私はこれらの女性たちと一緒に働いた男性たちが長い目で見て女性の能力に気が付きその実力を認めることで、女性の地位向上につながるのだと結論で書いている。そうでなくても文脈からその結論は明白なはず。

それから人権擁護法のことを書いているのは直接エミちゃんとは関係ない。私は差別は市場が解決するという説を人権擁護法に関連づけて書いているだけだ。

すべてが自分のことだお思い込むのはエミちゃんの悪い癖よ。


カカシ

上記投稿者名: scarecrowstrawberryfield Author Profile Page 日付 February 24, 2008 8:54 PM

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