February 8, 2008

ロムニーの撤退。共和党はマケイン支持に一致団結せよ!

今、ワシントンDCにおいてCPACと呼ばれる保守派の会が行われている。本日ロムニーの演説が予定されていたので、もしかして撤退表明はその時にするのではないだろうかと思っていたら案の定だっった。

(CNN) 米大統領選の共和党指名争いで、マケイン上院議員に次ぐ2番手となっていたロムニー前マサチューセッツ州知事(60)が7日、選挙戦からの撤退を表明した。これにより、同党の候補指名はマケイン氏が獲得することがほぼ確実となった。

ロムニー氏はワシントンで開催された保守派の会合で、「自分のことだけを考えるなら、続けていただろう。だが私は、アメリカを愛しているからこそ名乗りを上げたのだ。われわれの党と国家のために、身を引くべきだと考える」と語った。

ロムニー氏はまた、対抗してきたマケイン氏について、「いくつかの問題では私と意見が異なるが、イラクでの成功と、国際テロ組織アルカイダ指導者オサマ・ビンラディン容疑者の捜索のために全力を尽くすこと、アルカイダとテロを撲滅することでは一致している」と述べた。

ミスター苺は、これはロムニーのした演説のなかでも一番良いものだったのではないかという。「こういう演説を常にしていれば、この演説をしないですんだかもしれないのに。」

保守派大会に集まったロムニーの支持者たちはロムニーが、票差はまだ挽回できる最後までがんばろう、という演説を期待していたため、演説の途中までロムニーが撤退宣言をするとは思っておらずびっくりしてブーイングをする人たちもいた。しかしロムニーがこの時期に潔く「党のため、ひいてはアメリカのために」身を引くと宣言したことは本当に共和党にとっても国にとってもそしてロムニー個人の政治家としての将来のためにも懸命な決断だったと思う。

先ず共和党にとっての利点といえば、早期に候補者が決まった方が党のまとまりがつくし、有権者がひとりの候補者に慣れるという点があげられる。このままロムニー対マケインの辛辣な戦いが9月頃まで続いて党大会まで指名が持ち越されたら、結果的にどちらに落ち着いても一般の有権者には共和党はまとまりがないという印象を与える。また、予選中に暴露された候補者の弱点への記憶が有権者の記憶にまだ残っていることもあり、ライバル政党の候補者に悪用される可能性は十分に考えられる。仲間同士の争いを早めに終わらせてマケインが共和党の候補者として党が一体となって何か月も選挙運動をするのは非常に好ましい状況だ。時とともに共和党の保守派もいったい何が一番たいせつなのかを考え直すことができる。

ロムニーが熱弁を振るったイラク戦争の大切さだが、何と言ってもこれが今のアメリカにとって一番大切なことだ。ブッシュ大統領ははからずも戦争時代の大統領となった。戦争は始めた以上は勝たねばならない。たとえそれが誰の政権で始まった戦争であるにしろ、アメリカがはじめた戦争は後継のアメリカ大統領が責任を持たねばならないのである。民主党が政権を握れば、それがオバマにしろヒラリーにしろ、この戦争は敗戦となる。どんな口実を使ってアメリカ軍を撤退させようと任務が終わっていないうちの撤退は退散としか受け取られない。今のアメリカはテロリストに負け犬と見られる余裕はないのだ。そんなことをすれば必ず数年のうちにアメリカ国内で大規模なテロが起きるだろう。民主党がブッシュ大統領による対テロ国内政策をことごとく反対してきたことからも、アメリカの軍隊だけでなく諜報機関にも手かせ足かせがはめられ、国土安全保障など投げキッスをしてさよならである。

ロムニー個人についていうならば、党の将来やアメリカの安全を自分の政治生命よりも優先させたという奥ゆかしい人格が買われ、次回の大統領選挙ではロムニーのモルモン教など問題にならず候補者として好意的に受け取られるだろう。今回のことで十分に名前は売ったし、マケインと違ってロムニーはまだ若い。民主党が勝ったら4年後に、マケインが勝ったら8年後にまた候補に出馬することが出来る。

ロムニーの感動的な演説の後にマケインが同じ会場で同じ観客を前に演説をした。この会場に集まっている人々はマケイン大嫌いの保守派が主である。去年の集会ではマケインは出席していない。今回の大会でマケインが演説することはずっと前から決まっていたが、保守派の参加者の間ではマケインの演説中にヤジを飛ばしてやると公言していた人たちまでいた。であるからマケインが舞台に立った時の観客の雰囲気は決して好意的なものではなかった。

先ずマケインは去年の大会に欠席したことについて、決して敵意からくるものではなく大統領候補として立候補する準備に追われて忙しかっただけだと弁明した。しかし今回は違うとし、自分が共和党候補として指名されるならば、クリントン議員やオバマ議員に勝つために保守派の支持は必要不可欠であると語った。

皆様の多くが私がここ数年とってきた立場に強く反対しておいでです。それは十分に理解できます。私には皆様と同意出来ないこともありますが、私はその元となる皆様の信念には敬意を評します。そして時として私の行動が保守派の同胞の皆様の常識から外れたとお考えの方々にも、私が多くの意味で保守派としての実績を守ってきたことを認めていただきたいと切に願うものであります。

マケインは自分が保守派であることを誇りに思うと語った。自由とは創造者(神)によって与えられた権利であり政府によって与えられるものではないという基本的な価値観や信念はより保守派の人々と同じだと語り、宗教右翼の観客に自分の価値観が決して彼等と異質なものではないことを強調した。

特に保守派が尊敬してやまない故ロナルド・レーガンの信念を引き合いにだし、自分が若い頃からどれだけレーガンを尊敬していたか、レーガンが1975年に語った『政党はすべての人々の全てであることはできない。政党は基本となる信念を代表し、それは議席が増えることや政治的な便宜で妥協されてはならない。』という信念にどれほど従ってきたかを語った。

マケインはベトナム戦争時代、海軍将校で戦闘機のパイロットだったが、彼は行かなくてもいい戦闘に志願して途中で撃ち落とされ北ベトナムで8年間も捕虜となっていた体験のある人だ。マケインが最初にCPACに参加したのは彼が海外から帰国した直後で、ロナルド・レーガンに招待されてのことだ。彼はその時のレーガンの演説に感銘を受けたという。

私はレーガン革命の一歩兵として政治界に入ったことを誇りに、非常に誇りに思っています。そして私が取ったいくつかの立場がその政治的伝統を忘れたかのように思われたとしたら、私は決して忘れていないと保証します。私は当時そうであったように今も(保守派との)関わりを誇りに思っています。

マケインは自分の政治的実績は全体的に見れば保守派の信念に沿っているとし、小さい政府、国家経済の責任、低い税金、法を貫き通す裁判官など政治的な面と共に、保守派が非常に大切と考えている社会面でも、生きる権利(人工中絶反対の意味)命、権利、自由、幸せへの遂行というアメリカの基礎的価値観を信じて守ってきたことを強調した。

ここで彼は保守派の間から非常な反感を買った移民問題をとりあげた。マケインが移民と言ったとたんに観客席からはヤジやブーイングが飛んだが、マケインは笑顔でそれに対応。違法移民に関する自分の意見が選挙運動には不利であることは知っていたが自分は信念を守りとおしたとした上で、マケインは保守派の人々の反対意見も尊敬すると語った。

マケインは移民問題を解決するために自分の議案は正しいと考えていたが、議案が失敗したことを教訓として、先ず国境を守ることが先決であることに気が付いた。大統領になった暁には国境防御を優先させ、移民受け入れは国境が十分に守られたと国民が納得してから取り組むと公約した。

マケインがここまで言うと、最初にヤジを飛ばした同じ観客たちが一斉に拍手をして声援を送った。この演説の模様を朝日新聞

その保守派が主催するこの日の会議でマケイン氏はロムニー氏に続いて姿を見せ、「私のこれまでの歩みは保守本流」と強調したが、聴衆の中には拍手をしないどころか、演説を通じてそっぽを向き続ける人が少なからずいた。

などと書いているが、これは真っ赤な嘘である。

要するにマケインはひとつふたつの意見の違いではなく、長年に渡る自分の保守派としての実績から自分を判断して欲しいと強調しているわけだが、私にいわせたら彼の長年の実績こそが保守派とはかなりかけ離れたものがあると思う。しかしながら、今はそういうことを言っている時ではない。意見の違いよりも同意できる点に焦点をあてて、マケインがどれほど民主党議員よりマシかということを考えなければならない。

マケインは民主党が政権を握れば候補者が誰であろうとアメリカは後退すると強調した。そうなれば政府が個人の生活に干渉し、国家安全もおざなりにされ、アメリカは再び危険な立場に陥ると。共和党と民主党の違いはささいなものではなく、このように大きなものなのだと。

マケインが擧げた民主党候補と自分の違いは次の通りだ。

  • クリントンもオバマも税金を上げ、連邦政府の規模を拡大する。

  • 私は(税金を)下げるつもりです。先ずはブッシュ減税を永久なものとするところからはじめます。企業税金の率を35から25%にさげ、国内の企業と職を留まらせます。私は最低税金を終わらせます。そして民主党議会の税金引き上げによって経済を行き詰まらせるようなまねはさせません。

  • 民主党は健康保険の問題を政府の役割を拡大することで解決しようとする。

  • 私はこの問題は自由市場によって解決するつもりです。そして個人が大事な選択を自分で出来るような自由を尊重します。

  • 民主党は国民から選挙を通じて支持を得られない政策の変更を、自分達に都合のいい裁判官を選ぶことによって裁判を通じて得ようとする。
  • マケインは自分は法律を守ってきた実績のある裁判官を任命するとし、ブッシュ大統領が最高裁判官として候補にあげているロバーツ裁判官やアリート裁判官を名指しして、人々の権利や資産を守るような裁判官を任命すると語った。ここでマケインがアリート裁判官の名前を出したのはマケインが保守派が尊敬するアリート裁判官を侮辱したというデマがまことしやかに流れたことへの反応だ。マケインは過去に民主党と結託してブッシュ大統領が候補にあげた保守派裁判官の議会承認を拒否している。これに対して少なからず腹を立てているのはカカシだけではない。マケインが本気で保守派裁判官を任命するつもりなのだとしたら、これにはかなりの説得が必要となる。しかし一応ここで公約したからにはそれなりの意味があるというものだろう。

  • クリントンもオバマも戦況を無視して政治的な理由でイラクからアメリカ軍を撤退させる。これは無思慮に人々の命を危険にさらし我々の国土安全を脅威にさらすことになる。

  • 『私はこの戦争に勝つつもりです。』マケインは現場の司令官たちの勇気と自己犠牲と誇りを尊敬するとし、これまでに失った尊い命に心をいためるとし、他のどの候補者よりも自分は戦争の苦しみを理解できるとした上で、イラクで負けたならばもっとひどい損失を味わうことになる、これまでの犠牲を無駄にすることになる、自分は絶対にそのようなことはさせないと約束した。

  • 民主党はイランの核武装がもたらすイスラエルや地域への脅威に真剣な対応をしない。
  • マケインはイランのイスラエルとアメリカを破壊しようという悪徳な野心を絶対に許さないと、はっきりイランに明確に示すつもりだとした。

  • クリントンもオバマもアメリカが過激派テロリストに狙われるのはアメリカに原因があるという外国の批評家の意見に屈する。

  • マケインは適切な政府機関を起用して常に攻撃的に我々が大切であると考える全てのことを憎むテロリストと戦う意志をはっきりさせた。これは「令状のない盗聴反対」などと言って、ことあるごとにアメリカのテロ対策から骨抜きにさせようとする民主党への真っ向からの挑戦だ。

    マケインは自分と保守派層との間で多くの意見の違いがあったことは事実だとしながらも、民主党との違いに比べたら同意できる点の方が多いはずだ、そのことに注目してほしいと訴えかけた。今後も意見が衝突しても同胞の保守派に常に相談し同意を求めるつもりであり、自分が間違っていると感じた場合には素直にその過ちを認めるつもりだ。自分が正しいと信じた場合にはその信念を貫きとおすつもりだ。しかしその場合にも自分が一番優先するのはアメリカとその自由を保証することであると強調した。

    この演説を生で聴いていたミスター苺はすばらしい演説だったと言っている。最後の方では保守派の観客たちが立ち上がって声援を送ったという。パワーラインでビデオを見ることできるので、最後の2〜3分だけでも見ていただければ観客の好意的な反応が伺える。

    マケインがこのような演説を今年の11月まで繰り返せば、これまでマケインは鼻をつまんでも投票できないとか、マケインが共和党候補なら政党登録を民主党にしなおしてヒラリーに入れるなどとだだをこねていた保守派の意見も緩和できるだろう。ここは共和党は一致団結して民主党打倒のために戦わねばならないのだ。

    February 8, 2008, 現時間 12:04 PM

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    下記投稿者名: rice_shower

    ロックを礎石とし、ハイエクあたりに行き着くとされるリバタリアニズム(ハイエクはclassical liberalを自称していたそうだが)にアメリカの保守、右派の真髄を見、シンパシーを感じる私ですが、リバタリアン(及びリバタリアニズムにシンパシーを感じる人達)の現代アメリカにおける評価、意義、全体への影響はどうなのだろうか。
    少なくともネオコン思想、世界警察の役割などはアメリカの保守思想の伝統に著しく反すると思うのだが。

    上記投稿者名: rice_shower Author Profile Page 日付 February 8, 2008 6:55 PM

    下記投稿者名: アラメイン伯

    マケイン氏の軍歴は見事なものですね。
    日本にとって気になるのは中国との関係です。ヒラリーは中国との関係が怪しい。
    日本人としてはマケイン氏に大統領になってもらいたいです。

    上記投稿者名: アラメイン伯 Author Profile Page 日付 February 9, 2008 5:26 AM

    下記投稿者名: アレン

    マケインの演説中のやじについてですが、それを見越したCPACの職員たちがやじ声を消音するためにマケイン支持者をその会場に埋めたと聞きましたが、本当ならばなかなか利口ですね。マケインがやじを浴び退陣せざるを得なかったとなったらどれほど民主党を有利な立場に立たせることか、、すこし分別をわきまえなさいと言いたいです。

    上記投稿者名: アレン Author Profile Page 日付 February 9, 2008 5:41 AM

    下記投稿者名: アレン

    マケインは過去に民主党と結託してブッシュ大統領が候補にあげた保守派裁判官の議会承認を拒否している。これに対して少なからず腹を立てているのはカカシだけではない。

    怒るわけがわかりますが、そんな大したものじゃないと私は思います。正直、フィリバスターを廃棄する運動は近視眼的だったと思います。確かにマケインは共和党と対立することは対立してあれを保存しましたが、当時共和党が多数派でした。しかし、まさか民主党がホワイト・ハウスも両院も握るようになれば少数派の共和党はどうしようもなくなります。

    上記投稿者名: アレン Author Profile Page 日付 February 9, 2008 6:40 AM

    下記投稿者名: scarecrowstrawberryfield

    マケインが共和党指名になったらヒラリーの選挙運動を応援するとまで言っていた保守派政治評論家のアン・コルターはCPACに招待されなかったそうです。去年までは毎年スター扱いだったのにね。ま、あのひとは常に暴言を吐くのでちょっと危なっかしいところがあり、こういう大事な時にまた変なことを言われたら困るというところだったんでしょう。

    アレンさんのいう通りCPACの主催者は非常に空気の読みがうまいですな。

    カカシ

    上記投稿者名: scarecrowstrawberryfield Author Profile Page 日付 February 9, 2008 10:38 AM

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