December 10, 2007

イギリス諜報部、アメリカはイランに一杯食わされたと指摘

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イランが2003年後期に核兵器開発を停止していたというNIEの報告はどうも疑わしいと感じているのはカカシだけではない。どうやらイギリスの諜報部もこの報告書はかなり眉唾だと感じているようだ。 英国のテレグラフ紙によると、

イギリスの秘密工作員たちはアメリカの諜報報告が先週発表したイランが核兵器プログラムをお釈迦にしたという話は非常に疑わしいとし、CIAはテヘランに一杯食わされたと考えている。

先日カカシがここここでも書いたように、イギリス諜報部もNIEが元にしたという新しい情報とは、イランが意図的に流した偽情報なのではないか考えているらしい。

先日紹介したワシントンタイムスの記事で、アメリカ諜報部の幹部は新しい証拠がイランの情報操作による偽情報あるという可能性はみとめたが、多分そんなことはないだろうと語ったとあった。しかし同じ諜報幹部はイランがウラニウム濃縮をしていることを認めておりイランが始めようと思えばいつでも核開発を始められる体制にあることは多いにありうると認めたとあった。

次に紹介したロサンゼルスタイムスの記事で、我々は新しい情報とはイラン軍部高官同士の盗聴された電話での会話と、後にみつかった軍人の日記だということを学んだ。.

素人目でみても、イラン政府が経済制裁や軍事行使の危機を防ぐため、自分らが敵に対して驚異的な存在ではないことを証明する偽情報を流し、必ず見つかる場所においておくなんてことはすぐに思いつく。これ、情報操作の常識。NIEは諜報分析の専門家なのであるから、これが偽情報である可能性についてもっと深い分析が必要なのではないか?

前述のテレグラフでもイギリスの分析者によってその点に焦点が当てられている。

関係者の話によるとイギリスの分析者はイランの核兵器開発スタッフは自分らの電話が盗聴されていることを承知のうで意図的に偽情報を流したと考えているという。「我々は非常に疑っている。我々はこの情報がいったい何を基にしているのか、いったいどこからきたのか、これは亡命者から得たじょうほうなのか、盗聴した内容が基本なのか、知りたい。彼らは電話が盗聴されていることは知っている。こちらを混乱させるためにどんなことでもいうだろう。」

「だいたいアメリカの諜報部はあのあたりではあまりたいした仕事をしていない。イラクの件でもかなり痛い目にあってるし。」

どうやらイギリス諜報部はアメリカのCIAを高くかっていないようである。

ジミー・カーターやビル・クリントンの時代に、アメリカは実際にスパイを敵地に送り込む、いわゆるヒューマンインテリジェンスを極端に減らしてしまった。それで我々の諜報技術は衛星写真だの、盗聴だの、ネット監視だのといったものに頼りすぎる傾向がある。こうした情報はその国の非常網がどうなっているかといったことを調べるには格好の道具なのだが、敵側の意図を分析するには不十分である。こうして得た情報では、相手側が意図的に嘘をついているかどうかを分析することは出来ない。

敵側の意図を確かめるためには、どうしても生身の人間によるアメリカに忠誠心をもったスパイによる諜報が必要になってくる。この人間は敵国に長年普通の市民として住み着き、敵国の文化や宗教に慣れ親しみ、表向きの政権ではないく実権を握っている組織やその機構について充分に理解し、敵の言動の微妙なニュアンスを正確に捉えることができ、実際に敵がどのくらい真剣にわが国や近隣諸国を攻めるつもりなのかといったことをきちんと把握できる人間でなければならない。このような人材はちょっとやそっとでは育たない。敵国への諜報行為は長年にわたる長期計画でやっていかなければ駄目なのである。

まさにイギリスやイスラエルが何十年もかけてやってきた諜報作戦がそれである。イギリスに関しては帝国時代からすでに世紀単位で諜報活動を行ってきたし、イスラエルの場合は諜報が間違っていればイランのアクマディネジャド大統領の希望通り、この世から抹殺されてしまう恐れがあるのであるから、諜報にかけては真剣だ。

アメリカの諜報はスパイによる諜報ではなく単なる盗聴だけだ。才能ある人材を駆使してアメリカよりもずっと諜報網が優れているイギリスとイスラエルの諜報部が、NIEはイランに一杯食わされたといっている以上、ブッシュ政権はNIEの報告をもう一度真剣に見直す必要がある。もしもこの情報が偽情報でNIEが本当にイランに騙されていたとしたら、そしてこの情報をもとにイランへの圧力を緩和してしまって二年後にイランに核兵器完成なんてことになったら目も当てられない。

もっともアメリカのスパイのなかにも、この問題をかなり心配している人たちがいる。上記の記事によれば、CIAの中間層の工作員の間でもイランは核兵器開発を続けていると考えている人たちが多いようだ。ただ残念なことにCIAは2004年にイラン国内での大事なコネを大量に失ってしまったため、その確認がとれないのだという。

どうして2004年なのかというと、2004年はイランで選挙があり、当時テヘランの市長だったアクマディネジャドが大統領に選ばれた年で、彼の党が圧倒的多数議席を取り、ハシミ・ラフサンジャニ前大統領とその配下のものが一世に取り除かれてしまったのである。どうやらアメリカのコネはアメリカ人スパイではなくて、すべてイラン人高官だったらしく、彼らが勢力を失ったとともに、アメリカもコネを失ってしまったというわけだ。

イスラエルもイギリスも自国民をスパイとしてイランに送り込んできた。両国とも多くの才能あるスパイをその正体がばれて暗殺されるという犠牲を払ってきた。アメリカは賄賂を使ってイラン高官を買収することと、盗聴や衛星写真での諜報に力を入れてきた。どのやり方も諜報には重要な役割を果たす。しかしアメリカは、(特に民主党は)短期的な目でしか物事を見ることが出来ず、長期的に敵国の様子を探るスパイの育成を全くしてこなかった。アヤトラ・ホメイニによる宗教革命をCIAが全く予期できなかったのも、CIAがイランからスパイを一斉に引き上げてしまったことが直接の原因だ。

現在の世界は非常に危険な状態にある。このような非常時には非常対策が必要だ。北朝鮮、ベネズエラ、ロシア、中国など、スパイを送り込んでアメリカがじっくり観察しておかなければならない危ない国がいくらもある。アメリカ市民はアメリカ政府によるスパイ活動を反対したりはしないだろう。だが、問題は民主党ならびに、共和党とは名ばかりのRINOと呼ばれる政治家達である。CIAがテロリストを尋問するときに多少手荒な真似をしたというだけで大騒ぎをしている連中だ、アメリカのスパイがイランに潜入して任務のために人殺しもいとわないなどとなったらねずみを怖がるご婦人のように机の上にのっかって裾をまくって叫び出しかねない。

繊細な心の持ち主に諜報政策を任せていてもいい時代はとっくの昔に終わったのだ。我々にはラングリーにあるCIA司令部の壁にもっともっと多くの黒星(殉職した人は黒星で表される)が張られる覚悟ができるような根性の座った男女が必要なのである。アメリカには「非合法戦闘員」を敵国に潜入させるという誇り高い伝統が以前には存在した。いまやアメリカはその伝統に戻るときである。いや、もうとっくに戻っているべきだったのである。

December 10, 2007, 現時間 9:54 PM

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