November 8, 2007

戦争は兵隊に任せろ! アメリカ兵に手かせ足かせの戦闘規制

今朝、ハワイの地方新聞Honolulu Advertiserを読んでいたら、ハワイ出身の陸軍兵が犯したとされるイラク市民殺人事件について、この兵士が意図的にイラク人を殺したと言う証拠はないとして、裁判をしない推薦がされたという記事が載っていた。この事件は逮捕して武装解除されたイラク市民を上官の命令で部下が銃殺したという容疑だったが、部下は殺すのが嫌でわざとはずして撃ったと証言していた。すでに捕らえて直接危険でない人間を殺すのは戦闘規制に反する行為ではあるが、果たしてこれが犯罪といえるのかどうかその時の状況によって判断は非常に難しい。正直いって、アフガニスタンやイラクの戦争では、少しでも怪しい状況があるとすぐに兵士を逮捕して取り調べると言う事件があまりにも多すぎる。兵士らは当たり前の戦闘行為をしているのに、いちいち自分らの行動が犯罪としてみなされるかどうか心配しながら戦争をしなければならないのだからたまらない。

たとえばこの状況を読者の皆さんはどう判断されるだろう。アフガニスタンの山奥にテロリストのアジトがあるので偵察に行って来いと命令を受けた海軍特別部隊シール4人が、偵察中に羊飼いの村人三人に出くわした。戦闘規制では非武装の非戦闘員を攻撃してはいけないということになっているが、彼らの顔つきから明らかにアメリカ人を憎んでいる様子。シールの4人はこの三人を殺すべきか開放すべきか悩んだ。開放すれば、中間達に自分らの任務を知られ待ち伏せされる可能性が多いにある。かといって、キリスト教徒としてまだあどけない顔の少年を含む一般市民を殺すのは気が引ける。第一タリバンかどうかもわからない市民をやたらに殺したりすれば、殺人犯として帰国してから裁判にかけられる可能性は大きい。シールたちはどうすればよかったのだろうか?

結論から言わせてもらうと、シールたちは殺すという意見が一人で、もう一人はどっちでもいい、他の二人が殺さずに開放するという意見で羊飼いたちは開放された。そしてその二時間後、シール4人は200人からのタリバン戦闘員たちに待ち伏せされたにもかかわらず敵側を100人近くも殺した。しかしいくら何でもたった4人で200人の敵にはかなわない。大激戦の末、味方側の三人が戦死、一人が瀕死の重傷を負って逃げた。この生き残った一人は、羊飼い達を解放すると決めたひとりだったが、あとになって「どんな戦略でも、偵察員が発見された場合には目撃者を殺すのが当たり前だ。それを戦闘規制(ROE)を恐れて三人を開放したことは私の生涯で一番の失態だった」と語っている。無論そのおかげで彼は自分の同胞三人を殺されてしまったのだから、その悔しさは計り知れない。

上記は2005年アフガニスタンで同胞3人をタリバンとの激戦で失い、救援に駆けつけたチームメンバーたちの乗ったヘリコプターをタリバンのロケット弾に撃ち落され全員死亡。ひとり生き残ったシール、マーカス・ラテレルの身に起きた実話だ。彼の体験談はLoan Survivorという本につづられている。

私は理不尽なROEがどれだけアフガニスタンにいる特別部隊やイラクの戦士たちの任務の妨げになっているか以前から書いてきたが、それが実際に十何人というアメリカ軍でもエリート中のエリートを殺す結果になったと知り、改めて怒りで血が煮えたぎる思いである。

実は先日、私はCBSテレビの60ミニッツという番組で、アフガニスタンにおけるNATO軍の空爆についての特集を観た。詳細はカカシの英語版のブログbiglizards.net/blogで数日前に書いたのだが、関連があるのでここでも紹介しておこう。

この番組では司会者のスコット・ペリーはアフガスタンではタリバンによって殺された一般市民の数と同じかそれ以上の数の市民がNATO軍の空爆の巻き添えになって殺されていると語った。いや、ペリーはさらにNATO軍(特にアメリカ軍)は敵側戦闘員が居る居ないの確認もせずにやたらに市民を攻撃しているとさえ言っているのである。

ペリーが現地取材をしたとするアフガニスタンからの映像では、明らかに爆撃をうけて破壊された村の一部を歩きながら、ペリーは女子供や老人を含む親子四代に渡る家族がアメリカ軍の空爆で殺され、ムジーブという男の子だけが生き残ったと、お涙頂戴風の臭い演技をしながら語った。確かにアメリカ軍が意味もなく一般市民の家を破壊して四世代の非戦闘員を殺したとしたらこれは問題だ。だがこういう話にはよくあることだが、本当はもっと複雑な背景がある。

実際破壊された家の家主で、生き残った少年の父親は地元タリバンのリーダーで、アメリカ軍がずっと捜し求めているお尋ねものである。空爆時には家にはいなかったが、家主がタリバンのリーダーということは部族社会のアフガニスタンでは家族も必然的にタリバンである。そんな家が建っている村は必然的にタリバンの村なのであり、村人はすべてタリバンだと解釈するのが妥当だ。しかも、アメリカ軍がこの村を空爆した理由はその直前に丘の上にあるアメリカ軍基地にロケット弾が数発打ち込まれ、激しい打ち合いの末、ライフル銃をもったタリバンがこの村へ逃げ込むのが目撃されたからなのである。ペリーはこの状況をこう語る。

時間は夜でした。アメリカ軍は地上で敵との接触はなかったにもかかわらず、モーター攻撃の後に空爆援助を呼ぶ決断をしました。アメリカ空軍の飛行機はこの近所にひとつ2000ポンドの重量のある二つの爆弾を落としました。(瓦礫の中を歩きながら)これが一トンの高性能爆発物が当たった泥つくりの家の跡です。爆弾は標的に当たりました。しかし煙が去った後、ライフルをもった男達の姿はありませんでした。いたのはムジーブの家族だけです。

敵と地上での接触がないもなにも、この村の付近からアメリカ基地はロケット弾を撃たれているのである。しかもライフル銃をもった男達がタリバンのリーダーが住んでいる村へ逃げ込んだのだ。アメリカ軍はこの状況をどう判断すべきだったとペリーは言うのだ?第一、破壊さえた家でライフルをもった男達が発見されなかったという情報をペリーは誰から受け取ったのだ?もしかしたら自分らはタリバンではないと言い張っている村でインタビューをしたタリバンの男達からか?

だいたいアフガニスタンの村でライフルを持っていない家など存在しない。だからといって彼らが皆テロリストだとは言わない。強盗や盗賊に襲われても警察など呼べない山奥の部族たちは自分らの手で自分らをまもらなければならない。ソ連軍が残していったカラシニコフ(AKライフル)がいくらでも有り余ってるアフガニスタンだ、一般人がライフルをもっていても不思議でもなんでもない。もしタリバンのリーダーの家でライフルが一丁も発見されなかったとしたら、それこそおかしいと思うべきだ。

このアフガニスタン人たちは、他の市民と同じようにアメリカが支援している政府を支持するかどうか迷っています。私たちは怒りは予想していましたが、これには驚きました。

ペリー:(村人の一人に)あなたはまさかソビエトの方がアメリカよりも親切だなどというのではないでしょうね?

村人:私たちは以前はロシア人をアメリカ人よりも嫌っていました。でもこういうことを多くみせつけられると、ロシア人のほうがアメリカ人よりよっぽど行儀がよかったと言えます。

タリバンがロシア人よりアメリカ人を嫌うのは当たり前だ。すくなくともタリバンはロシア人を追い出したが、アメリカ人はタリバンを追い詰めているのだから。

マーカスの本にも書かれているが、タリバンやアルカエダの奴らは西側のボケナスメディアをどう利用すればいいかちゃんと心得ている。イラクでアメリカ軍に取り押さえられたテロリストたちは、アメリカ兵に拷問されただのなんだのと騒ぎたて、アルジェジーラがそれを報道すれば、西側メディアはそれに飛びついてアメリカ軍やブッシュ大統領を攻め立てる。テロリストたちは自分らの苦情を聞き入れたアメリカ軍がアメリカ兵を処罰するのを腹を抱えて笑ってみていることだろう。「なんてこっけいな奴らなんだ、敵を殺してる味方の戦士を罰するなんて、間抜けすぎてみてらんねえや。」ってなもんである。

だからこのタリバンの奴らも取材に来たアメリカの記者団を丁重に扱い、何の罪もない善良な村人に扮してCBSの馬鹿記者の聞きたがる作り話をしているにすぎない。それも知らずにペリーのアホは村人が自分らはタリバンではない、ただの平和を愛する羊飼いだと言っているのを鵜呑みにし、村人がソビエトよりアメリカが嫌いだという証言に衝撃を受けたなどと、とぼけたことをいっているのだ。

私はこういうアメリカのボケナス記者どもに一度でいいからアメリカの部隊に従軍でもして実際に敵と面と向かってみろと言いたいね。殺さなければ殺されるかもしれない状況でとっさに自分らの目の前に居る人間が敵か味方か判断できるかどうか、自分で体験してみろ!それができないんなら黙ってろ!お前らのいい加減で無責任な報道がどれだけのアメリカ兵を殺す結果になるとおもってるんだ!

マーカスの体験談を読むに付け、私はこういう無知蒙昧なリポーターをぶん殴ってやりたい思いでいっぱいになった。

November 8, 2007, 現時間 10:27 PM

エントリーが気に入ったらクリックしてください。
にほんブログ村 政治ブログへ

トラックバック

この記事のトラックバックURL: http://biglizards.net/mt4.21/agakhantrack.cgi/2562

コメント

前のコメント

下記投稿者名: hatch

ゲリラ戦に突入したら、民間人と戦闘員の区別がつかないのは覚悟しなければなりません。
そして、その結果民間人を殺したら戦争犯罪として裁かれるのもまた覚悟しなければなりません。
日本も中国で便意隊(その当時の中国語で言うゲリラ)に苦労し、そのあげくに敗戦後、戦争犯罪人として裁かれた軍人がいました。ちなみにその法廷をコントロールしたのはアメリカでした。
当然ながらカカシさんは、その当時の日本帝国軍は侵略軍だし、アフガニスタンの米軍は秩序回復を目指す善だと言われると思います。
しかし、明らかに民間人と思われるアフガニスタンの少年に憎悪の表情を読み取れるということは、アメリカが善とは言い切れないと思います。
ちなみに、アフガニスタンでのゲリラによる死者と米国国内に発生する殺人事件による死者とどちらが多いでしょうか。あるいは、人口比による割合はどちらが多いでしょうか?
さて、その犯罪大国のアメリカに例えば、イラク人が治安対策に派遣されたとしたら、アメリカの殺人事件は減少するでしょうか?
カカシさんはどう判断されますか?

上記投稿者名: hatch Author Profile Page 日付 November 11, 2007 8:09 AM

下記投稿者名: scarecrowstrawberryfield

hatchさん、

第二次世界大戦後の戦争犯罪の裁判については、私は国際社会が日本を裁いたのは偽善だったと思っています。私は国際裁判というのが非常に嫌いです。勝った国が敵国の軍人幹部を敗者として殺すというならそれはそれでしょうがないですが、犯罪者だから殺すなんてのは奇麗事にすぎません。それをいうなら、アメリカの空爆なんかどうなっちゃうんですか?

新しくできた日本政府が旧日本軍の軍人を戦争犯罪で裁くというのであれば、それはそれで納得もいきますけどね。

しかし、明らかに民間人と思われるアフガニスタンの少年に憎悪の表情を読み取れるということは、アメリカが善とは言い切れないと思います。

これはイスラム教徒の近代化について書いたときにバーナード・ルイス教授のお話から書きましたが、中東の人間がアメリカ人を嫌うのはアメリカ人がなにかやったからとかいう理由からではなくて、アメリカという文化そのものへの憎悪もたぶんにあります。特によそ者は嫌うという部族社会では外国の軍人が武器をもってずうずうしく自分の村を歩き回っているのが気に入らないというのは当然でしょう。

それをもってしてアメリカの行為が善かどうかなどということは判断できません。ところでアフガニスタンの治安維持はNATO軍の管轄です。確かにアメリカ兵の割合が半分と一番多いのでアメリカがやっているような印象をうけますが。

アフガニスタンでのゲリラによる死者と米国国内に発生する殺人事件による死者とどちらが多いでしょうか。あるいは、人口比による割合はどちらが多いでしょうか?

割合からいけばアフガニスタンのほうが圧倒的に多いでしょうね。でも問題なのは毎日の生活がだいたい予測できるかどうかにかかっていると思います。つまり、今朝おきてから寝るまで、普通の生活をしている人間は爆弾で吹っ飛ばされるとか、ゲリラに撃たれるとか考えませんよね。

テロが怖いのは、その予測が出来ないからです。今日マーケットで買い物に行くという行為さえ、もしかしたら、、という危険性を含む。普通のバス旅行でさえ護衛をつけなければ盗賊に襲われる、というような国ではきちんとした社会を継続することができません。

アメリカが犯罪大国だというのは、日本と比べればという話で、中南米とか東南アジアとかに比べたらそれほど犯罪が多い国ではないですよ。それに犯罪がおきそうな場所は限られているので、そういうところを避ければ、一般人が犯罪の被害を受けるということはそれほど多くありません。無論どこでも油断は大敵ですが。

カカシ

上記投稿者名: scarecrowstrawberryfield Author Profile Page 日付 November 11, 2007 10:21 AM

下記投稿者名: hatch

----------------------------
中東の人間がアメリカ人を嫌うのはアメリカ人がなにかやったからとかいう理由からではなくて、アメリカという文化そのものへの憎悪もたぶんにあります。特によそ者は嫌うという部族社会では外国の軍人が武器をもってずうずうしく自分の村を歩き回っているのが気に入らないというのは当然でしょう。
----------------------------
なるほど、ですね。そのとおりでしょう。
ただ、なんというのかな、カカシさんが言われるように「ずうずうしく」というふるまいがやっかいでしょうね。
その昔、日本が中国や韓国で「ずうずうしく」あり、見下げた様子で振る舞ったことが嫌われたりしたようにです。
もう、自衛隊はサマワから撤退していますが、今は参議院議員になった「ヒゲの隊長」佐藤まさひさ氏の【イラク自衛隊「戦闘記」】や通訳だった金子貴一氏の【報道できなかった自衛隊イラク従軍】などをカカシさんが読まれたらどう思われるでしょうか。
もちろん、サマワとバクダットでは事情が違うでしょうが、それでも米軍のふるまいをかえる参考にはならないでしょうか。例えば、以下に挙げる例です。
少なくとも、自衛隊には上記の本があるのですから、日本人の通訳がいました。米軍には亡命イラク人や現地イラク人ではない、アメリカ人の(見た目アメリカ人、ぶっちゃけて言えば、白人の)通訳が何人かいるのでしょうか。それだけでもずいぶん変わると思いますけど。

上記投稿者名: hatch Author Profile Page 日付 November 17, 2007 12:12 AM

登録ありがとうございます。 さん コメントを残して下さい。 (サインアウト)

このサイトへ初めて投稿される場合には、サイト主による承認が済むまで投稿が画面に現れないことがあります。しばらくお待ちください。


登録者を記憶する(URL必要)


© 2006-2015 by 苺畑カカシ - All Rights Reserved