August 25, 2007

イラク新作戦はうまくいってない! イラク駐留兵が語るイラク状況

イラク状況について語るには、はやり現地で実際に戦争をやっている軍人たちの意見を聞く必要がある。そこでカカシは二回に分けてペトラエウス将軍の対反乱分子作戦(Counter Insuregency, COIN)が現地でどのような効果をあげているのか、現地からの意見を紹介したいと思う。

今日は8月20日のニューヨークタイムスに掲載された、イラクから15か月の任務を終えて帰還を間近に控えた陸軍第82空挺隊の下士官7人が共同で書いたコラムを紹介しよう。

帰還をまじかに控えた空挺隊の一部隊として、我々は最近メディアが表現しているようなイラク紛争が序々にまとまりがつきそうだという考え方には猜疑心をもっており、我々が毎日のように見てきた内乱や政治的な不安定さを無視したものだと感じます。

7人は戦場がアメリカのコントロール下にあるという考え方は、単に戦場が別の場所に移ったというだけの状況を無視した間違った考え方だと語る。著者はイラクにはアルカエダ、スンニ過激派、民兵、犯罪者といった色々な役者がおり、彼等の忠誠心にはそれぞれまちまちだとし、イラク警察やイラク軍といった我々アメリカ軍が訓練している人員ですら我々は安易に信用できない事実を指摘している。

例えば数日前の夜、イラク軍の関門と警察署の間で爆発した爆弾によってアメリカ兵一人が死亡、二人の兵が重傷を負うという事件を目撃しました。地元イラク市民はアメリカ人の捜査官にイラク軍人と警察官が犯人を案内して爆弾を仕掛けるのを手伝ったと証言しました。これらの地元市民の証言は爆弾が爆発する前にアメリカ軍に通告していたなら、イラク兵や警察や地元シーア民兵に家族を皆殺しにされる運命にあったことを暴露しました。

シーア地区だけでなく、スンニ地区でも同じようなことが起きていると著者は言う。スンニ派はシーア民兵やシーアが多数を握る政権から自分らを守るためには自分達が結束してスンニ民兵を組織することにあると考えはじめた。アメリカ軍はアルカエダと戦うためにこれらのスンニを武装しはじめた。COIN作戦には地元民を駐留軍の代理として使うことが大事だが、この代理の忠誠心は必ずしもアメリカ軍にあるとは限らない。確かにスンニ民兵らは対テロ戦争には効果をあげてはいるものの、一旦武装したスンニ民兵がアメリカ軍撤退後の将来、イラク政府と衝突しないとは誰も言い切れない。

つまるところ、敵が誰なのか、味方が誰なのかさえも分からないような状況で、前線は混乱状態にあるという。彼等のいる場所がいかに危険かを象徴するかのように、この記事の著者の一人が途中でパトロールに出て頭を撃たれて避難するという事件が起きた。このような状況にあってイラクの治安情勢をアメリカ中心の見解で判断するのは危険だと著者らは語る。

アメリカからの視察団が以前に危険だった町で安心して歩き回ることができるというようなことではイラクの治安向上の確たる証拠とはいえないのです。問題なのは地元市民の体験と我々の対反乱分子作戦の未来です。この見方をすると大多数のイラク人が不安を感じており、四年間もかかってまったく平常な状況をもたらすことのできなかった占領軍と見るようになり、今後もそのようなことはできそうにないと考えているのです。

またアメリカ側がイラク政府がもっと責任をとるようにと圧力をかけるのも逆効果になっていると7人の著者は言う。イラク政府はこれまでフセイン時代に弾圧されていたシーア派が大多数を占めているので、彼等は自分達が得た権力をどうやって守り通すかに必死であり、イラク統治など興味がないと著者らは考えるらしい。イラク政府のまとまりのなさの原因として、著者らはアメリカ政府のおかした1)バース党員の排除、2)イラク軍の解散、3)緩やかな連邦制の起用、といった三つの間違いが、シーア派の自分勝手な意図とアメリカとの間ですれ違いが起きているというのである。

ただ著者らが言うイラク政府の政策はアメリカ政府が期待するような基準や時間表で起きるのではなく、イラク人がイラクにとって適していると考える方法で起きるという考え方にも、イラク政権のまとまりがつくのは、軍事的な紛争が解決した後だとする考え方にもカカシは同意できる。

四年間に渡る占領で、我々はすべての約束に失敗しました。...私はあるイラク人から「我々に必要なのはただ飯ではなく安全だ」といわれました。...我々の存在がイラク人を独裁者から解放したかもしれませんが、それと同時に我々はイラク人の自尊心を奪ったことにも気が付かねばなりません。我々は彼等の尊厳を取り戻すためには自分達を占領軍であると認め、撤退をせざる終えなくなるでしょう。...

我が軍の士気について語る必要はありません。敬虔なる兵士として我々は任務を必ず遂行させます。

実際に現地で同胞を失いながら命がけで戦っている兵士らの言うことであるから、これは現地の状況を全く知らない反戦派の意見のように意味のないものとして無視することはできない。確かに現地では難かしい状況が存在している。以前にサドルシティから報道していたマイケル・トットンもシーア派民兵がイラク軍に大分入り込んでいる事実を書いていた。またこれまで敵としてみていたスンニ反乱分子をアルカエダと戦ってくれているからといって安易に信用するのも危険だというのはよく分かる。

これについて、別のグループのイラク帰還兵が反論しているので、それは次回に紹介しよう。

August 25, 2007, 現時間 4:14 PM

エントリーが気に入ったらクリックしてください。
にほんブログ村 政治ブログへ

トラックバック

この記事のトラックバックURL: http://biglizards.net/mt4.21/agakhantrack.cgi/2372

コメント

前のコメント

登録ありがとうございます。 さん コメントを残して下さい。 (サインアウト)

このサイトへ初めて投稿される場合には、サイト主による承認が済むまで投稿が画面に現れないことがあります。しばらくお待ちください。


登録者を記憶する(URL必要)


© 2006-2015 by 苺畑カカシ - All Rights Reserved