August 19, 2007

百聞は一見に如からず、、ん? イラクからのねつ造記事色々

去年のレバノンでの戦争の時、私はレバノンから流れてくる多くの「ニュース」がねつ造記事だったことをここでもいくつか紹介した。だが、ねつ造記事はレバノン戦争で終わったわけではなく、イラク戦争でも敵側によるプロパガンダ作戦は常に続いている。

レバノンの泣き女、イラクでもゲスト出演?

数日前からブラックファイブが紹介している「魔法の銃弾」写真がそのいい例。



BulletLady1    BulletLady2

自宅に打ち込まれたという銃弾を掲げるイラク女性二人、上が数日前にAFPに掲載された写真、下は数週間前のもの。この二人別人のはずなのになんか似てない?

上の写真は8月14日付けのAFPに掲載されたもので、バグダッドにあるサドルシティへの連合軍による攻撃の際に、連合軍から自宅に何発も撃ち込まれたとして、老女が銃弾の二つを拾ってカメラマンに見せている姿だとある。AFPのカメラマンの名前はWissam al-Okaili。ところが数週間前にもこのカメラマン、同じような写真を別の場所で別の出来事として紹介しているのが下の写真だ。

二人の女性が同一人物に見えるのは私だけではあるまい。なんだかこれではレバノンの神出鬼没の泣き女と同じではないか。(笑)しかし、この写真を見てこれが嘘記事であることは一目でわかる。撃った後の銃弾が弾の先と殻がついたままであるはずがないからだ。

これと同じように、やはりAFPに載った写真に下記がある。もう色々なブログで掲載されたからご存じの方もあるかもしれない。



Granade and a puppy

手りゅう弾を加える子犬

この写真のキャプションには「サドルシティの動物シェルターに投げ込まれシェルターにいたかわいい子犬や子猫を大量に殺害してビルを破壊した手りゅう弾をくわえる子犬」となっているが、素人の私の目にもこの写真がおかしいことはすぐにわかった。なんで使用済みの手りゅう弾にピンがはまっているのだ? しかし、それよりもなによりも、使用済みの手りゅう弾なら爆発して粉々になってるはずとミスター苺に指摘され、そりゃそうだと笑ってしまった。これらの写真を見て武器に対する知識などほぼ無いに等しいカカシですらおかしいと気付くのに、プロのジャーナリストがこんな偽写真にころっと騙されるというのはどういうことだ?

プロパガンダビデオ

これとは別に、イラクには反米プロパガンダを製作しているテレビ局があるという話は以前から聞いていたが、彼等はプロパガンダ映像を撮影してはユーテゥーブなどにアップロードして紹介しているようだ。私がスコット・ビーチャムが書いたブラッドリー戦車で犬をひき殺す趣味の兵士の話はでっちあげだったという話をしていたら、どっかのお節介がご丁寧にアメリカ兵がイラク人のペット犬を殺したというビデオを紹介してくれた。

抗議が殺到したのか今は制限付きの視聴となっているので、あえてリンクはつけないが、ビデオは数人の米兵が半壊した建物にはいっていくところから始まる。その動作からパトロールの最中らしいことは察知がつく。背景で犬がうるさく吠える音がするが、音声が悪いためその後のことがよくわからない。カメラが建物のなかにいた米兵から外で横たわっている犬へと移る。犬はまだ生きていて悲痛な声をあげているが、そこへ地元のイラク人らしい若い男が空に手をあおぎながら近寄ってくる。米兵らしい男が「あっちへいけ」と言っている声がする。イラク人はしばらく犬の前でしゃがみ込んでいるが、すこしすると立ち上がって嘆いているように立ち去っていく、、というものだ。

この映像のメッセージが冷酷な米兵にいペット犬を殺されて嘆くイラク人男性というものであることは明白だが、事実は本当にそうなのだろうか? まずこのビデオでは実際に米兵が犬を撃っている映像はない。犬はカメラの視覚外でイラク人によって殺され、それを近くにいたイラク人が確かめにいっただけだったのかもしれない。それでアメリカ兵は危ないからそばへよるなと警告していたのかもしれない。こういう数分のビデオでは前後の状況が分からないので実際に何がおきたのか正しく状況を把握するのは難かしい。

それに、実際にアメリカ兵がこの犬を射殺したことが事実であったとしても、それが単にアメリカ兵が遊びで犬を殺したと言うことにはならない。いやそうでない可能性の方が高いのだ。私は以前にイラク帰還兵から聞いたことがあるのだが、イラク人は犬を忌み嫌っているため、凶暴な野良犬が市街地をうろうろしていることが多いそうだ。自爆テロなどの被害者の遺体にこれらの野良犬が集ったりすることもしばしばあったようで、一口に犬といっても我々が想像するような愛らしいペットの犬とは質が違うのである。また米兵はパトロール中に犬が吠えかけて敵に自分らの位置を知られるのを防ぐため、うるさい犬を射殺することがあるという。だからこのビデオの場合も任務の邪魔になった野良犬を射殺しただけだったのかもしれない。何にしてもこのビデオだけ見ていても、これが明かに冷酷な米兵の蛮行だと結論付けることには無理がある。

プロパガンダフィルムというのはまあ、えてしてこういうものだ。同じ映像でも前後の状況を全く変えて放映すれば、見る側の受ける印象は180度かわってしまうのである。だからユートゥーブのような映像だけ見てイラク状況を正しく判断するのは非常に難かしいということがわかるはずだ。

August 19, 2007, 現時間 5:42 PM

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