August 27, 2007
AP:イラク死傷者の数は倍増という不誠実報道
今日APのイラク死者数倍増(Iraq Body Count Running at Double Pace)という記事をみて、どうも変だなと思った。主流メディアの記事は見出しが非常に不誠実な場合が多いので記事は注意深く読む必要がある。
APの記録はイラク市民、政府高官、警察、警備隊のうち戦闘やスンニによる自爆テロなどの攻撃で死亡した人数を含む。またシーア派の死の団体による処刑スタイルの殺人も含まれる。
調査の結果には下記が含まれる:
- イラクは去年にくらべて国全体で2006年の一日あたり33人から今年は62人と戦争関係での死者数は倍になっている。
- 今年の最初の8か月で2006年全体で暴力的に殺されたイラク人の数を1000人近く上回っている。今年はすでに14,800人が戦争関係の攻撃や宗派間争いで殺されている。...
- 民間や警察の死者の76%がバグダッドで出ていた今年の一月から、7月には52%となりほぼ去年の割合と同じになった。
- イラク赤三日月によると避難したイラク人は今年一月447,337人から7がつ31日の100万から114万人と倍増した。
しかしペンタゴンのリチャード・シャーロック准将は2006年から比べてイラクでの攻撃数は減っていると語っているとAPにはある。これはいったいどういうことなのだろうか?
先ずイラクでの死亡者数を記録しているicasualties.orgの民間人死者の数をみてみると確かにAPの記事にある通り今年の方が去年よりは多い。だが、イラクで何が起きているのかという事変を考慮に入れずに単に暦で年度末に線をひっぱってみても、それが何を意味するのか全くわからない。ましてや現在の新作戦がうまくいっているかどうかという判断には全くつながらないのである。下記の表をみていただきたい。
2006年 | 死者数 |
---|---|
1月 | 590 |
2月 | 688 |
3月 | 901 |
4月 | 808 |
5月 | 969 |
6月 | 738 |
7月 | 1063 |
8月 | 2733 |
9月 | 3389 |
10月 | 1315 |
11月 | 1741 |
12月 | 1629 |
2007年 | 死者数 |
1月 | 1711 |
2月 | 2864 |
3月 | 2762 |
4月 | 1521 |
5月 | 1782 |
6月 | 1148 |
7月 | 1458 |
8月 | 1313 |
去年の民間人の死亡者数は1月から7月にかけて1月の600人程度から1000人を超える7月までじょじょに増えていった。去年の2月にシーア派のアルアレキサー聖廟の爆破事件以来宗派間争いが激しくなっていたから、死者が増え続けたのは当然だろう。8月になると突然2733人と増えるが、8月はシーア派の巡礼の月で、9月はラマダンの月である。イスラムテロリストが祭日を狙って攻撃を増加させるのは周知のことであるからこの数字もおかしくない。ラマダンが終わった10月から今年の1月まではその数は千数百人とあまり変化はない。だが、アメリカ軍の増派があると発表のあった2月と3月にはそれぞれ2864人と2762人と急増している。これはアメリカ軍の増派に備えてアルカエダが攻撃を増加させたのが原因だ。
しかし新作戦が本格的に始まり出した4月になるとその数は1521人に減り、その後もその低レベルが続いており、今月はシリア国境の250人という犠牲者を出すテロを含めても7月の数よりも減りそうである。
またAPは、今年7月のテロ攻撃の35%が北部で起きており、去年の22%よりも増加しており、8月ではこの割合はもっと増えるだろうと指摘している。これは明らかにアメリカ・イラク軍がバグダッドで激しい掃蕩を行っていることから、テロリストが手薄な北部を狙っているのが理由だ。
イラク市民の犠牲者数から現在行われている新作戦の効果を測ろうというのであれば、新作戦が本格的に始まった今年の4月から一年間さかのぼった数字とその後の数字を比べるべきである。背景の状況を無視して去年と今年という暦上のでの比較などしてみても何の意味もなさない。
August 27, 2007, 現時間 3:15 PM
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