April 8, 2007

人質はどう振舞うべきか その2

アメリカ海軍の新聞、ネイビータイムスに今回のイギリス兵と同じような状況で拘束されたアメリカ兵らの話が載っている。同じ海域で任務にあたっているアメリカ海軍としては、今回の事件は全く他人事ではない。個人的には私の同僚のおじさんが今あのあたりの軍艦で勤務中ということもある。

さて先ず気になるのはアメリカ海軍の兵士らがイギリス兵のような状況におかれた時、アメリカ兵はどのように行動することが期待されているのだろうか?ということだ。今回のイギリス海軍の反応から言って英兵らの行動はROE(戦闘規制)に乗っ取ったものであったようなので、ここでアメリカ軍のROEを確かめておこう。

4月5日のCNNのインタビューにおいて、マイク・ミュラン大将海軍総司令官は、解りやすくいえばアメリカ海軍兵はこのような状況を防ぐことを期待すると語った。

「私の期待としては、アメリカの水兵たちはこのような状況において拘束されることは絶対にないということです。」と語った。「個人や隊は自己防衛の権利に添って行動すべきであり、自分達を守るために上からの許可を待つ必要はありません。このような作戦や任務につく場合、そういう考えで出動しています。」

水兵らが拘束された場合には、アメリカ兵士として、基礎訓練キャンプで教え込まれた6つ「行動の規律」を守ることが期待されていると大将は付け加えた。 兵士は自分の名前のほかにはほとんど情報を与えず、その他の質問には「非常に限られた範囲で答えること」だと大将は語った。

ホッ! ではアメリカ軍はイギリス軍が明かに時代送れと考えている、「名前、生年月日、出席番号」以外は言うなというモットーを貫き通しているわけだ。よかった〜。

さて、ここで先のイギリス兵15人とほぼ同じ状況で捕われたアメリカ兵たちの話をしよう。まず最初の事件は1969年に北朝鮮にだ捕された偵察線プエブロの乗組員たちが11か月ほど拘留された事件。乗組員たちはその間しょっちゅう殴るけるの乱暴を受けた。彼等も今回のイギリス兵と同じようにプロパガンダの写真撮影をされたが、みんなでピースサインならぬバードサイン(中指を突き付ける侮辱のサイン)をしてにっこり撮影に応じたという。これがタイムマガジンに掲載されジェスチャーの意味が説明されてしまい、兵士らはまたまたひどい拷問にあったという。(ありがとう!タイムマガジン!)

そのうちの一人、ラルフ・マクリントックさんは「行動の規律」を自分なりに状況に当てはめて解釈しながら行動したという。

2001年4月、中国近郊の航空で中国戦闘機に無理矢理着陸をさせられた米海軍偵察飛行機PC3の乗り組み員24人が捕らえられ11日間拘束された事件では、状況が非常に似ているだけに米海軍兵と英海軍兵の行動の違いは対象的である。

そのうちのシェーン・オズボーン元海軍少尉は当初から乗組員全員で力の限り抵抗しようと決心。イギリス兵が解放された時点ではまだまだ抵抗力は残っていたという。

拘束10日目にして、オズボーン少尉は中国の空域を侵したと認める声明文を書けばその日のうちに解放してやると言われたが、「謝罪より自分が白髪頭の年寄りになる方が先だ」と部下たちに告げ部下たちも全員賛成したという。

今回の人質ドラマをみていてオズボーン氏は「私は自分の部下たちをどれほど誇りに思ったかを思い出しました。私たちは名誉を保持したまま(中国を)去りました。」

まったく、爪のあかを煎じて、、、、、

アメリカ軍人たる行動の規律

I
自分は我々の生き方をそしてわが国を守る軍隊にて戦うアメリカ人である。自分はそのためなら命を捧げる用意がある。

II
自分は決して自分の意志で降伏しない。もし自分が司令官なら抵抗の余地があるうちは隊員を決して降伏させない。

III
もし自分が捕われたなら出来る限りの方法で抵抗を続ける。自分は脱走に力の限り努力し他者の脱走も援護する。自分は敵からの恩赦も特別扱いも受け入れない。

IV
もし自分が捕虜になったなら同僚の捕虜とともに信心を守り続ける。自分はどのような情報も敵に与えず同胞を害するような行動には加担しない。自分が上官なら指揮をとる。そうでなければ任命された上の者の合法な命令に忠実に従う。

V
捕虜となり尋問された時は自分は名前、位、サービス番号、生年月日を提供する義務がある。それ以上の質問には最大限、力の限り答えるのを避ける。自分は口頭であれ筆記であれわが国を裏切り同盟国を傷付け、その努力を傷つけるような発言はしない。

VI
自分は自由の為に戦うアメリカ人であることを決して忘れない。自分が自分の行動に責任を持つこと、そしてわが国を自由にした信念に敬虔であることを決して忘れない。自分は神とアメリカ合衆国を信頼する。


April 8, 2007, 現時間 5:49 PM

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コメント

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下記投稿者名: asean

カカシさん

 カカシさんも書いてらっしゃるように”ROE”規定を戦闘状態でも無い状況に当てはめても少々無理があるんじゃないですか?

 戦闘状態にあるなら英国軍もそりゃぁ確かに応戦(?これもちょっと変ですね、なぜならイラン側から
攻撃をされて死傷者でも出た、という状況ではなかったんですから・・・”全員”無傷で開放された訳でして)したかも
知れませんが、英国軍は湾岸戦争の際の
空爆部門でWWII中の戦術を変更していなかった為にかなりの損耗を出したのを契機に各軍の戦術を大幅に見直したんです。
(早い話が、果敢と蛮勇無策を混同しないようにした訳です)

 それから、英国軍に係らず米軍でもそうですが、WWII(米国はヴェトナム以後)以降世界の秩序は
(特に冷戦終結後)「総力戦」ではなくなっています。

 この”総力戦ではない”ということは、損耗した兵員を無制限に補充出来ない、ことを意味しています。

 つまり、兵員が死亡してしまうともはやその兵員を「戦力」とすることが出来ないが補充(訓練期間も含めて)が
志願制度であるが故に死亡した兵員と同レベルの兵員を速やかに前線に補充出来ない・・・

 つまり、死ぬこと(兵力減)を奨励すること等無い、っということですね。
(与えられた任務を全うして且兵力の損耗をせず全員が生きて帰ってくること、それこそが最大の賞賛を得られるはずですよ)

 ”抵抗する”ということが武力的に抵抗することなのか、それとも精神的に屈しないという抵抗なのかを
あたかも武力抵抗することだけに焦点を絞ったような無責任な報道には正直な所、全く賛成出来ませんね。

 再度申し上げますが、現在のイランと欧米は戦争状態でも戦闘状態でもありませんから
”単に”多勢で無勢で拿捕された程度で武力的抵抗を実行することは何の意味もありません。
(下手をすると愚かな挑発行為としか認識されません)

 マイク・ミュラン大将海軍総司令官の発言は多分に政治的な意図を持ってなされたモノであることは理解出来ますけどね。。。

 米軍と英国軍のいわゆる早期警戒能力を比較すると、米軍では先ず起こりえなかった事態ではあったろうと
言う意味が発言の冒頭の部分ですし後段の部分は、米国兵士1人、1人は”モノを考えられない馬鹿ではない”
っということを言ってるのあって(笑)、もしも戦闘状態でもない地域で相手から直接的な攻撃を受けてもいない状態で
武力的に反撃して、それがイランとの間で戦端を開く
キッカケになった場合の「責任問題」に迄は言及していませんよ。

 戦闘が戦争に拡大しない、等という保障は何処にも無いんだけど・・・

上記投稿者名: asean Author Profile Page 日付 April 8, 2007 6:42 PM

下記投稿者名: Dafydd ab Hugh

Mr. ASEAN:

I have no idea what you're blithering about. If the army of one country attacks the army of another country, then they are at war. That's an act of war. No declaration required: When Japan bombed Pearl, that was all the declaration necessary for us to assume that "war" was the state of being between our two sovereign nations.

Let me make the points succinctly:

  1. Every military unit has the affirmative duty to defend itself.
  2. Every member of every military unit has the personal duty to do his utmost to achieve the mission... which in this case is to defend the unit.
  3. ROEs be hanged; the moral law of war takes precedence... and that requires units under attack to bloody well defend themselves.
  4. There are no contradictory rules.
  5. If the boarding crew deserves any sort of medal, it should be a hunk of lead shaped like a chicken's foot, surmounted by a white feather.
  6. If they get book deals, they should be with Quisling Press.
  7. The captain of HMS Cornwall should be reassigned to a position of less responsibility... say, in the Mojave Desert.
  8. The Minister of Defence should apply for a new job at Wimpy Burger.

We're seeing the slow-burning fuse sizzle across Britain, whch will ignite the dynamite under the English people. This shameful incident will be the catalyst of a new resolution that I hope will spread to the rest of Europe.

Either that, or as Dean Barnett wrote, "fighting back was not an option" will become the epitaph of the Western world.

Dafydd

上記投稿者名: Dafydd ab Hugh Author Profile Page 日付 April 8, 2007 11:58 PM

下記投稿者名: asean

Mr.Dafydd

 馬鹿げたおしゃべりかどうかはともかく、確かな戦争(紛争)状態にあるか、確かな攻撃を受けた、
っという状況であるならば”反撃”をすることは正当化される行為であり私もそれ迄否定する気はありませんよ。

 貴方は今のイランと米英の状態が戦争(紛争)状態にある、っと認識しているのですか?
それとも国際社会は戦争(紛争)状態にある、っと認めているのですか?

 英国政府は米国政府と同様に「先制攻撃の権利を持っている」っと国会で明言していますか?

 日本はホオーツク海域で(領海侵犯をしていましたが)非戦闘員である単なる漁民がロシア国境警備隊に
射殺された(実質的で確かな攻撃を受けた)上に拿捕されたにも係らずロシアへ”軍事的な反撃”をしなかった(ちょっと不思議な国是ですし、こうした方針を積極的な肯定はしませんが)

 しかし、確かに「非戦闘員の犠牲」は痛ましいことですが、そのことを持って相手に軍事的な報復をして
何が得られるというのでしょうか?

 今回の英国兵士の拿捕事件は、軍事組織の要員がイラン側に拿捕された、というレベルの話ではありませんか?

 米国のイラク攻撃の際に、英国の哨戒艇がイランに拿捕された事件があったと思いますが、その際も英国側は
報復的な軍事行動を起こしていませんがその事件と今回の事件の何が違うのでしょうか?

 それとも今回の英国兵士達は何か特殊な任務を帯びてイラン領内に潜入したのでしょうか?
(これだと話はもっとややこしくなりますが)

 貴方が仰ってることは「兵士のくせに反撃しないとは何ごとか!」っと言ってるに過ぎません。

 確実な攻撃を加えられたのであれば反撃するのは自己防衛という観点からそれは正しい行為でしょう
(UNのPKOさえ認めている行為ですからね)

 イランに対して”軍事的圧力”を加えながら、イランの国際社会のルールを遵守させるように仕向ける・・・
これが、現在の国際社会が模索している手段のはずです。

 面子や誇りの問題等ではありませんよ。

 訳の分からんことを言って反抗的な態度を示す、野蛮なイスラム教徒共をぶん殴ってやったぞぉ!
いい気味だ、ざまぁ~見ろ、舐めるなよ!的な満足感を得たいが故に貴方は反撃しろ、っと言ってるのですか?

 何処の世界に、シビリアンを差し置いて武官が国際関係の決着を付ける自由・民主主義国家が存在するのですか?

 武力行使は例え如何なる種類のモノであれ最後の最後に行使されるべきモノなのなのです。
(武官が無抵抗で戦わずに死ね、等という戯言言ってるのではありませんよ)

上記投稿者名: asean Author Profile Page 日付 April 9, 2007 12:42 AM

下記投稿者名: scarecrowstrawberryfield

アセアンさんへ、

Dafydd(ミスター苺)が言っていることは、イラン軍がイギリス軍をイラク海域で取り囲み、イギリス兵を拉致しようとした行為こそが戦闘行為だと言っているのですよ。それ以前にイギリスとイランが戦争状態にあったかどうかは問題ではないのです。

イランがイギリス兵らを拉致しようとした時点ですでに戦闘行為として判断し、イギリス兵はその時の任務目的云々ではなく、イギリス兵の根本的な義務として敵に拉致されないよう自己防衛をする義務があると言っているのです。

カカシ

上記投稿者名: scarecrowstrawberryfield Author Profile Page 日付 April 9, 2007 12:57 AM

下記投稿者名: Dafydd ab Hugh

アセアンさん

イギリス兵がイラク政府の許可を得てイラク側の水域にいたことは事実上間違いありません。彼等は独立国イギリスの軍人です。そしてその彼等はこれも独立国であるイランの軍隊に攻撃されたのです。これこそ戦闘行為の定義そのものであり、どのような国際法も決断をくだす必要はありません。

船舶臨検チームは自己防衛をする義務がありました。HMSコーンウォールはチームを守る義務がありました。イギリス海軍はコーンウォールを援護する義務がありました。各自その任務を怠ったのです。

Dafydd

上記投稿者名: Dafydd ab Hugh Author Profile Page 日付 April 9, 2007 1:13 AM

下記投稿者名: asean

カカシさん、Mr.苺さん

 拿捕された・・・ことをもって攻撃を受けた、という解釈は拡大解釈に過ぎないと思いますね。

 但し、英国海軍は援護ではなく回避する為のあらゆる支援を怠った、というのであれば、そうだと言えます。

 因みに、自己防衛=反撃ではありません。

 回避する(有体に言えば、逃げる)能力に欠けていたという意味で安易な臨検体制であったとすることは
出来るとは思いますが、それは当事者である兵員の責任ではありませんよ。

 強いて言うなら英国海軍の能力不足(失策)を単に摩り替えただけに過ぎないかも知れない。

 しかし、そうだとすると、中東イスラム諸国の指導者達と頭の中は何も変わらない、ということになってしまう。

 挑発行為を戦闘行為だ、とするならば世界中戦闘だらけになってしまいますよ。

上記投稿者名: asean Author Profile Page 日付 April 9, 2007 2:02 AM

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