December 24, 2006

日本右翼は拉致問題を政治利用しているか?

陳さんのところで、小森義久氏のコラム紹介があったのでそれを読んでいたら、先日うちのミスター苺が腹をたてていた北朝鮮による日本人拉致事件に関するニューヨークタイムスの記事に対する抗議だったので、ここでニューヨークタイムスの元記事と、小森さんの抗議の手紙とを比べ読みしてみたいと思う。小森氏は産経新聞ワシントン駐在編集特別委員・論説委員。以前にもアメリカで発表された外務省のウェッブページの内容について抗議をしていた人だ。常に流れる日本に対する誤ったイメージをただしていこうと努力されているようだ。

さて、今回小森氏が怒っているニューヨークタイムスの記事とは何か。小森氏自身の言葉を引用させていただこう。

 ニューヨークタイムズ(17日付)が、「北朝鮮による拉致問題」が右翼勢力によってあおられているという記事を書いた。書いたのは東京支局長のノリミツ・オオニシ(大西哲光)という方のようである。

 「日本政府や拉致被害者の家族らが進める「北朝鮮人権週間」に右翼組織のメンバーが関与していると指摘。拉致問題への理解を訴えたポスターの図柄なども引き合いに出し、北朝鮮への危機感をいたずらにあおる内容だと批判した。

 さらに「日本の国外では拉致などとっくの昔に言いふるされた」問題と指摘。日本国内では「民族派の政治家や
グループ」の画策でなお連日ニュースで取り上げられているとし、「拉致問題が憲法改正や学校教育での愛国心育成と同じ“右翼好み”の課題になっている」との見方を示した。記事は、拉致問題をめぐる「より穏健な声」が右翼勢力によって暴力的に封じられているとする一方で、安倍首相は支持率がかげると「政治的な生き残りのため、拉致問題にしがみつくことになるだろう」

私にも多少偏見があるので小森氏の要約は正しいと思うが、小森氏が取り上げている部分を元のNYTの記事からひろってみよう。

日本政府のポスターには日本のティーンエージャーの目の部分が血のように赤い北朝鮮の地図によって覆われている姿が写っている。国の若者は北朝鮮の脅威によって危険にさらされている、日本人を目をさませという暗示である。

このポスターは今週行われた30年前に北朝鮮に拉致され今も(日本によれば)そこにいるとされている日本人にたいして注意を集めるための集会において顕著な展示だった。



日本政府のポスター

日本政府制作の北朝鮮拉致問題ポスター

このようなイベントに常に出席する家族、支援者、右翼組織の幹部らは初めて出席する特別来賓、安部静男総理大臣を待っていた。...

日本の外では拉致問題は4年前に北朝鮮のリーダー金正日が犯罪が起きたことを認め5人の生存者を返したことでとうの昔に語り尽くされたことである。だが、ここ日本においてこの件は熱い話題である。メディアや国粋主義者の政治家や平和憲法を投げ出し愛国心や道徳観を学校などに設立させるなどの目的と同じようにこの問題に取り組む組織などによって生きながらえているのである。

この極めて感情的な問題は穏健派の声を黙らせることへとつながっている。(穏健派は)右翼からの身体への危害や口頭での攻撃をうける危険にさらされる。...

「拉致問題は誰にでも小学生でもわかるような問題です。」大阪外交研究大学の歴史家杉田ヨネユキ氏は語る。「安倍総理はこの問題を利用してある政治目的を果たそうとしているのです。北朝鮮は悪であり、立ち向かわねばならない、彼は要するに憲法を改正し愛国心を学校などで育成しようとしているのです。この方向へ彼はわが国を押し進めているのです。そしてこの方法は非常に効果をあげています。」

「しかしこれは非常に危険です」とこの問題に関する論文発表後右翼から脅迫状を得た杉田氏は語る。「あまりにも感情的な問題なので、国粋主義に煽られすでに言論の自由までが脅かされています」

でた〜! 脅迫状! 左翼連中はなにかと自分らの意見が批判されると右翼から脅迫状受けたというが、そんな事実があるというならその脅迫状を提示してもらいたいものだ。拉致問題に関して別な意見を公表すると暴力で脅迫されるとまで書くならば、この大西という記者、きちんとした証拠があっていってるのであろう。そうでなければこのような発言はひどい名誉毀損である。

また大西氏のいう「穏健派」とはどういうひとたちのことをいうのだろうか? もう拉致問題は終わったこととしてあきらめろというのが「穏健派」の意見なのか?

もともと拉致問題は北朝鮮はおろか日本政府も全く耳を傾けなかった時代から家族やその支援者の人々が大声をはりあげて何年も訴えてきたからこそ安倍総理のような政治家も耳を傾けるようになった。そして安倍氏や小泉総理が何度も北朝鮮に圧力をかけたからこそ5人の生存者の帰還が成立したのだ。これが大西氏がいうような「穏健派」の意見などきいていたらいまだに北朝鮮はしらばっくれていたに違いない。

それに北朝鮮が「返した5人」にしてみたところで、北朝鮮の意志で戻ってきたのではなく一時帰国という条件付きで日本へ帰国した人々が北朝鮮へ戻らなかっただけの話であり、もしあのまま戻っていたら彼等はいまだに北朝鮮で人質になっていたに違いない。

ちなみに北朝鮮に迎合してばかりいる韓国はいったい何人拉致被害者を返してもらったのだ?

私は拉致問題が過激な右翼団体に乗っ取られているのかどうか知らない。だが大西記者がここまで断言するのであればその証拠を提示すべきである。どの右翼団体がどのようにこの問題を乗っ取り、どのように反対意見や穏健派を脅迫しているのかはっきり示すべきだ。それもしないであたかも日本が戦前の軍事独裁政権のような方針に逆戻りしているような報道は無責任ではないのか?

それに、拉致問題は右翼とか左翼とかいった問題ではないはず。もし左翼系の人々がこの問題に真剣に取り組んでいたら、右翼団体に乗っ取られるなどということもないのではないか? 小森氏はこう語る。

左翼系の人々が、協力をしてくれるのであれば、喜んでお受けするつもりでいるのであるが、その方々は、一向に協力してくれることはなく、あまつさえ邪魔をしようとしている。社民党のホームページに2002年10月まで「拉致はでっち上げ」という北川氏の論文を載せていたことでもわかる。今でも、「拉致被害者の救出」を言うのではなく、この記事に書かれているように「拉致などとっくの昔に言い古された問題」として、北朝鮮擁護に走っているではないか?...

このような記事で「日本発」の誤ったメッセージを世界に配信すると言うことは、拉致被害者の救出のためには、何等助けにならない。かれの言う「より穏健な声」が多くの人民を見捨てる行為であることを、彼は今後「北朝鮮政権が崩壊」し、事実が明らかになった時にどのように責任を取るつもりなのか?

土井元社民党党首のように「間違えていました」ではすまないように思うのだが?

北朝鮮の脅威は事実である。いくら地面に頭を突っ込んで見ない振りをしていても、核兵器が飛んできてからでは遅いのだ。拉致問題は北朝鮮の病的な性質を顕著にあらわす症状なのであり、日本がそれを無視すればこの病気によって日本はより蝕まれるであろう。

私は健全な国粋主義は大いに育成されるべきだと考える。「穏健派」が右翼によって国を乗っ取られるのが嫌だというなら、多少の脅迫などに腰を抜かしてないで拉致問題に真正面から取り組んだらいいだろう。日本の将来を憂うなら拉致問題の支援者を右翼といって責める前にやることがあるのではないか?

大西記事は過去にもこんな記事をかいている:

覚えておこう!NYタイムズ大西記者、ぼやきくっきりさん

December 24, 2006, 現時間 1:33 AM

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» 中山首相補佐が拉致問題記事で米紙に抗議投稿 from In the Strawberry Field
先日カカシが日本右翼は拉致問題を政治利用しているか?で紹介したニューヨークタイムスに載った拉致問題の記事だが、中山首相補佐がニューヨークタイムスと提携しているインターナ... [Read More]

トラックバック日付け December 27, 2006 6:17 AM

コメント

前のコメント

下記投稿者名: アラメイン伯

こういう人達がいるから拉致が解決しないのです。
いや、こういう人達がいるから拉致が起きてしまったのです。
自分達の家族が拉致されたら、いったいどう思うのでしょうか?
自国民を救出しようという運動がどうして右翼的なのでしょうう?

拉致された人々の人権はいつたいどうなるのでしょうか?

僕なんか交渉に進展がなければ宣戦布告すべき問題だと考えます。本来、それくらいの大問題のはずです。

上記投稿者名: アラメイン伯 Author Profile Page 日付 December 25, 2006 5:43 AM

下記投稿者名: Sachi

アラメインさん、

>僕なんか交渉に進展がなければ宣戦布告すべき問題だと考えます。本来、それくらいの大問題のはずです

まったくその通りです。イスラエルなどは兵士二人の拉致でレバノンに攻め入ったくらいです。日本政府もイスラエルの爪のあかでも煎じてのんでもらいたい。

カカシ

上記投稿者名: Sachi Author Profile Page 日付 December 25, 2006 10:17 AM

下記投稿者名: MikeRossTky

こちらでもこの問題が取り上げられています。

http://www.occidentalism.org/?p=442#comments

韓国でブログをやっているオーストラリア人のサイトです。

MikeRossTky

上記投稿者名: MikeRossTky Author Profile Page 日付 December 26, 2006 11:19 PM

下記投稿者名: Sachi

マイクさん、

情報をありがとうございます。韓国でもこういうことを書いてくれるひとがいるのは心強いですね。

カカシ

上記投稿者名: Sachi Author Profile Page 日付 December 27, 2006 1:50 AM

下記投稿者名: MikeRossTky

カカシさん、

このサイトの管理者は韓国ですごいバッシングにあっているようです。たぶん、ブログの影響で大学との契約も…

MikeRossTky

上記投稿者名: MikeRossTky Author Profile Page 日付 December 27, 2006 3:07 PM

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