November 5, 2006

国産イスラム過激派に怯えるスカンジナビア

実は一週間前にこのスカンジナビアの国産イスラム過激派に関する記事を読んで、当ブログで紹介しようと思っていてそのままになっていたのだが、(The Danger of Homegrown Terrorism to ScandinaviaBy Lorenzo Vidino)、欧州における過激派イスラム教徒の台頭は非常に深刻である。

この前もちょっと触れたように、フランスでは本当のインティファーダが起きているという気がする。 インティファーダとは現政権に対する反対運動だが、いってみれば革命運動というべきものだろう。 これがイスラム教という過激派思想と混合して、ただの抵抗運動ではなくテロ行為へと動きが過激化していくことが現代の欧米及び東南アジア、アフリカなどでも問題なのだ。

ただフランスのインティファーダが主にイスラム系移民によって行われているのに対し、カナダ、ニューヨーク、ロンドンなどで最近起きたり未然に防がれたテロ陰謀は国産のイスラム教徒改宗者によるテロリストらによるものだった。 イスラム過激派というテロ団体がなければ、彼らは単に地元のギャングか暴力団に加わって普通の犯罪をおかすちんぴらで終わっていたか、あやしげなカルトに入って壷でも売っていたのだろうが、現代社会では世界的に広まっている聖戦主義イスラム教が彼らの飢えた精神を蝕んでいる。

この問題が深刻になっている地域にスカンジナビア諸国、デンマーク、スエーデン、そしてノルウェーがある。

これらの国々では多少ではあるがアルジェリアやエジプトのテロリストが多少の活動を行っていた歴史はある。 だがこれらの組織は規模も小さく、スカンジナビア諸国に危険をもたらすほどのものではなかった。 だが近年になってこれらの国々で危険な活動をしているのは、国産のテロ組織である。

2年ほど前にデンマークでは警察があるテロ組織を崩壊したばかりだが、去年の10月27日にコペンハーゲンで逮捕された16歳から20歳の若者が所属するテロ組織はまた別のものであるらしい。 去年の逮捕のきっかけとなったのはボスニアの対テロ作戦によるものだった。 逮捕の一週間前にサリエボの対テロ警察が二人の若者Mirsad Bektasevic とAbdulkadir Cesurを逮捕したが、この二人はスカンジナビアと深いつながりがあった。19歳のBektasevic青年はボスニア系スエーデン国籍で、 サリエボに爆発物を購入にきていたところを逮捕された。 21歳のCesurはトルコ系のデンマーク生まれ。 二人はサリエボで20kgの多種の爆発物材料を購入。これをすでに購入済みの自爆テロ用ベルトに装着する予定だったという。 彼らは自分らの野望を述べた映像をビデオに撮り、「ヨーロッパに対しイラクやアフガニスタンにいる奴らに対して」戦うと宣言していた。 彼らの標的はサリエボのイギリス大使館だったらしいとボスニア警察当局は考えている。

Bektasevicの電話通信を盗聴して、ボスニア当局はデンマーク当局に連絡。彼らの仲間はコペンハーゲンにアジトがあると告げた。 デンマークで逮捕された4人は地方当局ではテロリストとして全くマークされていなかった。 彼らは中東系デンマーク生まれの普通の若者で、普通に学校に通いサッカーチームに参加し、ごく普通の生活をしていたという。 それが何故か突然過激派イスラム教に興味を覚え、ネットで聖戦チャットルームに参加したりしているうちに、スエーデン国籍のBektasevicと出合った。後になってBektasevic はスエーデンを基盤にしたオンライン聖戦グループの重要陣部であることがわかった。このネットワークはオンラインを通じてイギリスや多のヨーロッパ諸国、そして海を超えてカナダやアメリカにまでひろがっているという。Bektasevicは MaximusというHNを使ってヨーロッパのイスラム教徒を募ってイラクでテロをやらせようとたくらんでいたという。

スエーデンで見つかった別の事件でも、やはりオンライン活動が重要な鍵を握っていた。スエーデン当局はこの5月国の各地で三人の若者を学生街のアプサラにある福音書協会爆撃陰謀の疑いで逮捕した。イラン系スエーデン人のNima Nikain Ganjin(22)と生粋のスエーデン人Andreas Fahlen(25)はストックホルムの郊外でつかまった。19歳のAlbert Ramic スエーデン南部の Trelleborgで取り押さえられた。三人はオンラインのチャットルームで聖教戦士について話し始めたのがきっかけで仲間になったという。 Ganjinは2005年にストックホルムのイラク投票場に火炎瓶を投げた疑いで調査の対象となっていた。彼らは具体案は何も持っていなかったが、イスラエルに同情的な姿勢を示す協会を爆破してやるつもりだったと語った。裁判の結果彼らは禁固8ヶ月から3年の刑が言い渡されたが、控訴の結果かなり刑が軽くなったようだ。

これらの若者に共通する点は彼らが普通テロリストになるような背景をもった青年らではないということだ。特に暴力的な問題児というわけでもなく、経済的に恵まれた中流クラスの平凡な若者達である。にも拘わらず彼らはネットのチャットルームなどに参加するに従い突然過激派ジハーディストへと変貌してしまったのである。ストックホルムのイラク投票場を火炎瓶で爆破した後、Ganjinはアルカエダ本部にメールを送って自分あちはアルカエダのスエーデン支部だなどと豪語したりしていた。

ムジャハディーンネットワークと呼ばれるこの組織のメンバーは、10年前までの過激派などとは違い、イスラム教に関する知識はほとんどない。彼らが興味がるのは暴力を使った抵抗の思想だけだ。

この9月、ノルウェー当局はオスロのユダヤ教寺院に銃弾を打ち込んだ4人の男を逮捕した。 彼らはアメリカとイスラエル大使館を襲う予定だったと語っている。 この男達は地方警察にはこそ泥もしくはギャングメンバーとして知られていたといい、イスラム教に対する知識もほとんど皆無だったという。

この記事の著者Lorenzo Vidino氏は、イスラム系移民でもなければ、特にイスラム教にそれほど関心がなく、家庭があれているとか、貧困生活をおくっているとかいう背景ではないスカンジナビアの普通の若者が聖戦主義・ジハーディズムに誘惑されるのか解らないと困惑している。

だが私にはこれは珍しい現象ではないと思う。どこの世界にも心のよりどころを求める不安定な若者はいくらでもいる。 もし彼らがキリスト教でも仏教でもいいからなにかすがれる宗教を信じて育ってきたならまた別だが、親への反発や自分らにとっては伝統的な宗教への反動がおかしな思想へと彼らを追い立てるのだ。 一昔前なら、欧米や日本などではハーレクリシナや統一教会といった比較的無害なカルトへ入会するような人々が、いまはオンラインを使って勧誘するジハーディズムへと魅かれて行く。 感受性の高く自分の無力を感じている若者が世界を変えることが出来るという破壊的な宗教にひかれたとしても私には不思議でもなんでもない。

だが、ここ数年の国産のテロリスト組織発生は、スカンジナビア諸国では深刻な問題だ。彼らには組織的な破壊力はないが、ひとつの自動車爆弾でも何十人何百人と殺すことができるわけだから、直接中東のテロ組織と関係があるかないかは問題ではない。 

デンマーク当局はデンマーク軍がイラクやアフガニスタンに出動していることや、モハメッドの漫画が2005年にデンマークの新聞に掲載されたことなどが原因となって、デンマークで大規模なテロが起きるのではないかと心配している。 そしてスカンジナビア諸国で起きるテロは国産のテログループによって行われるだろうと予測している。

最初に書いたように、イスラム過激派というテロ組織がなければ、彼らは別のおかしなカルトやギャングに参加していたような馬鹿者たちだ。 デンマークがイラクやアフガニスタンに出兵しているなどということなどテロの口実に使われこそすれテロが起きる本当の原因ではない。 

スカンジナビアが将来の国産テロを未然に防ぎたいのであれば、オンラインを注意深く観察し、ネット上でのテロネットワークを厳しく見張ることにあるだろう。 そして私はこれが一番大事なことだと思うのだが、世俗化したヨーロッパ諸国は伝統的なキリスト教などの宗教をもう一度見直すべきである。心によりどころのある若者はおかしなジハーディズムなどという死と破壊のカルトになど誘惑されないからだ。

November 5, 2006, 現時間 6:24 AM

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