October 5, 2006

北朝鮮核兵器実験と日本の核開発

北朝鮮がいよいよ核兵器実験を宣言した。

韓国の通信社、聯合ニュースによると、北朝鮮外務省は三日、朝鮮中央通信など北朝鮮の全メディアを通じ「科学研究部門で今後、安全性が徹底的に保証された核実験をすることになる」との声明を発表した。実験の具体的な日時、場所などには言及していない。北朝鮮が二○○五年二月の核保有宣言後、核実験の実施を公式に表明したのは初めて。これを受け、国連安全保障理事会は同日、北朝鮮の声明について非公式協議を行った。同国に自制を求める議長声明や報道機関向けの声明などを検討しているとみられ、四日午前(日本時間同日深夜)に協議を再開する。

実験に踏み切れば、昨年十一月以降中断している六カ国協議の崩壊は必至。国際社会は反発を強めており、韓国政府は四日に安全保障政策調整会議を緊急招集し、対応を協議する。ただ、今回の声明は米国から譲歩を引き出すためのカードとの見方もあり、実際に実験を強行するかどうかは明らかでない。

声明は「米国の反共和国(北朝鮮)孤立圧殺政策が極限を超え、最悪の状況をもたらし、これ以上、事態が進むことを傍観できない」とした上で、「自衛的戦争抑止力を強化する新たな措置をとる」として核実験実施を宣言した。

北朝鮮は米国の金融制裁を理由に核開発問題をめぐる六カ国協議への参加を拒み、孤立を深めている。今回の声明は国際社会の関心を引くとともに、十一月の米国の中間選挙をにらみ、ブッシュ政権の対北朝鮮政策の失敗をアピールすることも狙いとみられるが、真意は不明だ。

確かにいくら核兵器を持っていると豪語してみても、実際に実験を一度も行っていない以上、国際社会はかなり猜疑心を持ってしまう。この間のテポドン打ち上げも失敗したし、この実験も本当に成功する確率が低いのに実行に移すのはかなり危険な動きだといえる。それだけに実験を行うと宣言したことについて隣接国の日本は黙っているわけにはいかないだろう。

しかし北朝鮮のこうした動きはアメリカや日本を牽制するというより、韓国へ向けた行為だと脱・熱湯欲奮戦記さんは「核実験宣言の意図は?」で語る。

北朝鮮の核実験声明とあまりにもタイミングが良過ぎる事務総長当確の報。北朝鮮が韓国の外交権益拡大を誰よりも望んでいないのは明白なので、核実験も韓国へのけん制が狙いなのだろう。また、前述の日本が中韓への歩み寄りを見せ始めた事やロシアの北方領土返還が前進したことが北朝鮮が外交的孤立を更に深める事に繋がるので、経済制裁も含めそれに関連して核実験を持ち出したとも考えられる。それに加え、近い内に紛争当事者国になる危険性の高い国である事を知りつつも支持をした常任理事国も暗に北朝鮮を煽っている。

のぼせ上がった尊大な韓国人に北朝鮮による正義の鉄槌(笑)が下ることはまず間違いない。実験日時は恐らく日中or日韓首脳会談か事務総長選挙の前後。選挙前に起きた場合はもちろん事務総長の椅子はオジャンである。

北海道新聞の記事によると、挑戦の核実験は中国も面白くないようだ。以下北海道新聞の記事より、

北朝鮮「核実験」宣言 中国は全力阻止 

【北京3日佐々木学】中国政府は、北朝鮮が三日に宣言した核実験の実施を全力で阻止する意向だ。北朝鮮が核実験に踏み切れば、中国が議長を務める六カ国協議の枠組みが崩壊し、自らの経済発展に悪影響を与える北東アジア情勢の不安定化を招くとの考えからだ。

 北朝鮮が七月にミサイルを発射して以来、中国は北朝鮮が核実験を実施することを危惧(きぐ)し、高官の派遣などを通じて説得してきた。北朝鮮を六カ国協議に復帰させ、北朝鮮が最も交渉相手として重視する米国との集中的な協議に持ち込み、核問題を平和的に解決したいと考えている。

 日米など国際社会は、北朝鮮に食糧やエネルギーを支援する中国に対し、核実験阻止に向けた北朝鮮の説得をこれまで以上に期待するのは間違いない。中国は北朝鮮に友好関係の見直しも視野に入れた警告を発しながら働き掛けていく構えだ。

北朝鮮が本気で外交を考えるなら、この核兵器実験は愚かな考えであるが、彼等がアジア諸国にその勢力を誇示したいのであればこれなりの効果はあるかもしれない。だが、下手に実験をするとかえって日本のような国が核兵器開発に走る恐れがある。

保守派ブロガーの間ではこのような意見も見られる。

『日本も核武装やむなし!』Empire of the Sun太陽の帝国

日本の自称・平和主義者はあくまでも外交交渉で!あくまでも9条の平和主義で!などと言ってきたが、平和外交も憲法9条もついに北朝鮮の核開発を止めさせることができなかった!ではないか?

 

しかし日本が核兵器を持つとなると、アメリカがいい気がしないのではないかという意見もある。

安倍新政権、核兵器開発に着手?? グローバル・アメリカン政論

日本が核保有に踏み切ろうものならアメリカにとって歓迎されざる事態である。そうなると日米同盟にひびが入り、スエズからパールハーバーに至るアメリカの戦略に支障をきたす。オーソドックスな理解からすれば、日本が核兵器開発に踏み切る可能性は低い。それではマーキュリー・ニュースはなぜそのような記事を載せたのか?

その記事によると中曽根康弘元首相が日本は核保有を検討する必要があると述べたという。日本は近隣諸国、特に北朝鮮の核ミサイルと中国の軍事的圧力という脅威に直面している。また日本は戦後の平和主義を脱して「普通の国」になろうとしている。

新任の安倍晋三首相は日本の伝統的価値観の復活と平和憲法の改正を唱えている。これによって中国、韓国との関係で緊張が深まる可能性がある。さらに安倍新首相は北朝鮮の核ミサイル発射に対する先制攻撃を主張している。

これは以前にこのブログにもよく投稿してくれるアセアンさんがおっしゃていたのだが、どうも世界には核兵器をもってこそ一人前の国と考える風潮がある。いまや核以外の兵器でも広島/長崎におちた原爆よりも意欲のある爆弾が存在している以上、なにも核兵器を持つだけが能ではなかろう。日本が北朝鮮の核兵器に脅威を感じて軍備強化したいのであれば、もっと弾道ミサイル防衛システム(BMD)の開発に励むべきだろう。

しかし、韓国、北朝鮮、中国への牽制という意味では核開発も悪い考えではない。私は特にアメリカがどうのこうのいうとは思わない。日本が核兵器をもったからといってまさかアメリカに宣戦布告などするわけないし、かえってアメリカの核兵器を積んだ空母艦を受け入れやすくなってアメリカには都合がいいかもしれない。

ともかく、北朝鮮の脅威が刺激になって日本が軍事に力を入れるというなら、それは歓迎すべきことだろう。

October 5, 2006, 現時間 11:01 PM

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トラックバック日付け October 9, 2006 12:01 AM

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トラックバック日付け October 21, 2006 11:15 AM

コメント

前のコメント

下記投稿者名: asean

こんにちは、カカシさん

日本の核武装・・・これ程ナンセンスで根拠の希薄なモノはありませんね。

確かに日本の技術力なり設備からすると原爆を作ることは可能でしょう(他は全てあるがただ一つ作る意思が無い・・っという評価のようですが諸外国では)単に作る意思を持ったとしてもNPTやIAE等からの脱退といった手続きが必要である、っということはそれだけでも日本は孤立する可能性が出てくる。

実際、そんなことをして現在世界中にある日本企業とその従業員は?とか単に北朝鮮の指導者が危ないってだけの理由で
核武装を行うメリット等日本には全く無い。

つまり現代のグローバリズムを目一杯利用してその恩恵を(当然、被害も)受けているのは日本自身であるのですから
防衛力向上の名目だけの視野狭窄的に語られることがおかしい。

実は核保有そのものが問題なのではなく、その保有した核を平気で使用する可能性の高い政治指導者の質の問題なのですから
(フセインの大量破壊兵器問題の根源もそこですから)

日本が独裁、圧制国家ならばいざ知らず、自由・民主国家を自他共に認める日本が核武装をするってことは
それを許容した日本国民の質が問われる、ということに他ならない訳ですね(主権在民なんですから)

ただ、ちょっと気がかりなのは韓米同盟がかなり怪しくなって来ているので、何気に日本がFrontLineになってしまわないか?ですね・・・

例えそうであっても、戦術核でさえも現実的にはOverSpecな武器であることは米軍等は十分に知っていますので
(HandCarry可能規模の戦術核なら通常兵器で十分間に合う訳ですし)

日本には日本の役割っと言うか日本にしか出来ないやり方があるはずなんで、それが第三世界の
途上国と同じような思考で語られるのは、如何なモンかと

上記投稿者名: asean Author Profile Page 日付 October 6, 2006 12:20 AM

下記投稿者名: snoozy

北朝鮮の核開発は深刻な問題です。しかも、中国やロシアや韓国は、この期に及んでも、北朝鮮に対してきちんとした警告を与えようとしません。中国は表向き不快感を示していますが、その一方で、核実験を容認すべきだとする論文が発表されているようです。
(ネタ元)http://banmakoto.air-nifty.com/blues/2006/10/post_badc.html

日本核武装論は、“核には核を”ということなのかもしれませんが、日本国内にいると、物凄く唐突感があります。ネットで飛び交う怪情報と同じくらい、現実感が希薄です(笑

私は、日本の核武装論を頭から否定するつもりはありませんが、それだけを突出して議論するのではなく、防衛力の総合的な強化、という観点から議論すべきだと考えます。例えば、日米同盟の双務性と実効性を高めるために、武器輸出三原則や非核三原則や宇宙開発の非軍事化など、手枷足枷を外す必要があります。また、スパイ防止法や情報機関の整備なども整備しなくてはなりません。さらには、MDや敵基地攻撃能力の開発・整備など、通常兵器による防衛能力の向上も必要でしょう。そして、日本と利害や体制を同じくする民主主義国家との同盟関係を強化することも不可欠になるでしょう。具体的には、インドとかオーストラリアとか東南アジアや中央アジアの国々との同盟を検討すべきです。

こうした総合的な防衛力強化の一環として、核武装を研究するのであれば、同盟国を刺激せずに、日本に核兵器を向ける国々を牽制することができると考えます。今飛び交っている日本核武装論は、日本を危険視するために流されているデマのようなものだと思えて仕方がありません。

上記投稿者名: snoozy Author Profile Page 日付 October 6, 2006 2:09 AM

下記投稿者名: kokunan_jerusalem678

御存知の通り核兵器には濃縮ウランが必要であり、日本は濃縮ウランをアメリカやカナダ、オーストラリア、南アフリカから輸入しています。しかし、この濃縮ウランは結ばれた協定によって「平和目的」に限定されています。つまり、日本が核兵器宣言を出すと、協定違反として濃縮ウラン禁輸という制裁を食らうのです。これによって核兵器が造れなくなるのは全くどうでもいいことですが、重要なことは日本の総発電の20%以上を占める原子力発電がストップするということです。これで、日本経済は壊滅的なダメージを食らうでしょう。また、日本は「核廃絶」という旗振り役を国際社会でも果たしていたのですから、それを突如放棄するのはいかがなものかと思います。核廃絶は「善」とも言い切れませんが、少なくとも悪ではありませんし、理想としてもいいことでしょう。

核を単なるでっかい爆弾であるように思わせるような軽々しい核武装論は????…ですね

上記投稿者名: kokunan_jerusalem678 Author Profile Page 日付 October 6, 2006 7:10 AM

下記投稿者名: Sachi

日本の核開発は害あって益なしというところでしょうか。軍事強化は全く別な形で出来るので、日本が核にこだわる必要はないのかもしれません。

カカシ

上記投稿者名: Sachi Author Profile Page 日付 October 6, 2006 12:42 PM

下記投稿者名: snoozy

核武装を「検討する」というのは重要だと思います。
様々なオプションを検討せずに最適解が分かるほど、人間は賢くはないでしょうから。

日本は核兵器を持っていないけど、原料となるプルトニウムの抽出施設を持っている、という意味で世界的には稀有な国です。

上記投稿者名: snoozy Author Profile Page 日付 October 6, 2006 2:00 PM

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