October 4, 2006

仏テレビやらせ報道訴訟:経過報告 その2

この話が途中になっていたので、裁判の続きを話たいと思う。前回までのお話は下記参照:

仏テレビやらせ映像を指摘され訴訟起こす
仏テレビやらせ報道訴訟:経過報告 その1

ところでパレスチナによるやらせ映像について顕著にとらえたビデオを最近見つけたので、最初に紹介しておきたい。リンクがうまくつながらないので下記のアドレスをコピーして見ていただきたい。特に悲惨な映像はないのでご心配なく。ただ音がでるので職場で御覧になる方々はご注意のほどを。

イスラエル軍の拠点近くにおいて撃ち合いを演出するパレスチナ庶民。6分目くらいに葬式に運ばれる担架にのせられたホトケさんが担架から落ちて歩き出すという珍妙な映像もある。約20分。
http://video.google.com/videoplay?docid=-2152006111729790314
アルドゥーラ親子のやらせ映像はこちら。約14分。
http://video.google.com/videoplay?docid=-8500578539219029740

さて、では証人たちの証言を聞いてみよう。

フィリップ·カーセンティ、被告人のひとり、メディアレイティングの創設者。

カーセンティが最初にアルドゥーラ親子事件がやらせではないかと考えはじめたのは引導学の検査の結果、イスラエル軍の位置から直接に球が飛んでくることは不可能であると学んだ時からである。そのことが明らかになると、その反論としてパレスチナ側のみならずフランセ2からも跳弾によるものだと言い訳が出てきた。しかし父親のジャマールは9回も撃たれ、息子のモハメッド坊やは3回撃たれたという。12発の跳弾? 不可能だ。

フランセ2は数人の専門家をとジャーナリストを招いてNGビデオを披露したが、カーセンティは招待されなかった。裁判官と次のようなやりとりをした。

裁判官:デニスジャンバーとダニエルレコンテの両氏が27分のNG映像をみた。フランセ2の記者会見においてジャンバー氏は、ビデオのなかで父親が撃たれた証拠として傷跡を見せたと語っている。

カーセンティ:私はフィルムをみていません。記者会見への参加を許可されなかったからです。レコンテ氏はあとになって私にこの事件に興味があったので捜査したいと考えていたが、アルテ(フランス/ドイツ/スペイン共同の芸術テレビチャンネル)から捜査をやめなければ、今後彼のプロダクションとは一緒には仕事をしないといわれたとはなしてくれました。(略)たくさんの人たちが個人的に場面はやらせだと思うとはなしてくれましたが、公には語っていません。

カーセンティのいうことを信じるならば、国営テレビ局から独自の捜査に対するかなりの脅迫があったということになる。

フランシス·バレ (Francis Balle):メディア学の教授。元フランス公共放送委員会CSAのメンバー。

カーセンティのフランセ2暴露ビデオは説得力があること、元のアルドゥーラビデオは怪しげで、その効果は劇的だったと語った。

カーセンティの弁護士、Maître Dauzierは、フランセ2がNG映像を見せなかったのは情報源を守るためではないかと聞くと、バレ氏は「いえ、映像は公開されるべきです。真実は語られるべきです。」と答えた。

これは日本やアメリカでは考えらないことなのだが、フランスの名誉毀損裁判では、被告側が原告に対して言ったことが事実でも、いい方が過激だったということでも責められるというのである。そこで、カーセンティの弁護士はバレ氏にカーセンティの批判は「過激だった」のではないかと質問した。バレ氏はそうは思わないとし、このような状況の場合、強い言葉使いをする必要があったと語った。

ルーク·ロセンズウェイグ (Luc Rosenzweig) 元(Libération, Le Monde)のジャーナリスト/テレビ批評家。

彼はアルドゥーラ事件についてl'Express誌に載せるため独自の捜査を行おうとした。 l'Express誌の編集長は当時 デニス·ジャンバー氏(Denis Jeambar)だった。ジャンバー氏は Jacques Attali 氏から圧力を受けたため捜査を打ち切った。このAttali という人間がどういう立場の人なのか、カカシには分からない。

Rosenzweig氏は実際に何が起きたのかという推論を持ってはいないが、フランセ2の映像は怪しげだと語った。当初はRosenzweig氏はNG映像を見せてもらえなかった。ビデオは金庫にほかの書類と一緒にしまってあるという訳の分からない言い訳をされたという。 やっとNG映像を見せてもらった時はフランセ2がいっていたような27分ではなく、24分だったという。 この3分の差だが、フランセ2のエンダーリンが嘘をついていたのか、記憶違いだったのかちょっと気になるところである。

Rosenwzeig氏は本格的な取材をしようと、イスラエル側から色々な情報を集めた。しかしパレスチナ側を取材しようとするとカメラマンは病気でパリで治療を受けていると言われた。伝言を残しておいたが返事はなかった。つてを使って父親のジャマールへの会見を求めたが断られた。仕方なく親子が運ばれた病院の医師を取材に行った。病院の医者は事件が起きたのは午後3時だったのに、アルドゥーラ親子は午後一時に運び込まれたと証言していたからだ。しかしガザへの入るのは拒絶された。それでRosenweig氏はパレスチナ側での取材は不可能だとあきらめた。

映像がやらせだという確認することはできなかったが、エンダーリン氏がいうよりもこの映像がやらせである可能性はずっと高いと判断すると氏は語った。後にRosenzweig は la Ména's のウェッブサイトに「チャールズエンダーリンはどの言葉でも嘘つきだ」というコラムを書いた。

ところで、先に紹介した最初のビデオのなかで、病院での取材の場面が出てくる。病院へ「取材」に行くパレスチナのジャーナリストたちは、病院へつくと患者と話をする前に医者と相談をして、患者にはカメラの前でどういう証言をすべきかを打ち合わせしている場面がある。病院で無難に出産した若い母親とその夫に医師は、道が危険で病院へたどり着けず、夫がひとりで妻に車のなかで子供を生ませたと証言するよう指導していた。

私は昔からイラク戦争などでも、「病院の医師の話によると、、」とか「地元救援隊員の証言では、、、」という話はあまり信用できないと思っていたのだが、このビデオを見てはっきり確信した。敵側の一般市民の証言は全くあてにならないのである。

この裁判ではまだまだ似たような証言が続くが、結局、フランセ2の放映したアルドゥーラ親子の襲撃事件は完全なやらせだということがこの裁判において明らかになった。フランセ2はその事実を言い逃れることはできない。

名誉毀損がなりたつとすれば、それはフランスが国営テレビ局の放映は今後一切内容の真偽を問わず批判してはいけないというメッセージを国民に送ることになる。言論の自由などどこへ行くである。フランスのメディアはそれでいいのだろうか、いやもっと大事なのは、フランス国民はそんな偽物の大本営ニュースを毎日文句もいわずに受け入れるのだろうか。自由精神の最たるものといわれたフランス文明は今危機にさらされている。

フランスは今試されているだ。

October 4, 2006, 現時間 1:38 AM

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