September 7, 2006

イラク戦争と米共和党

イラク戦争は今度の中間選挙では重要視されそうだ。最近の世論調査ではかなりのアメリカ市民がイラク状況に悲観的な考えをもっているらしい。

オピニオン・リサーチ社が8月30日─9月2日、成人1004人を対象に実施した調査の結果によると、ブッシュ政権の政策を支持した候補者に投票する可能性が「低い」は55%で、「高い」の40%を上回った...

また、イラク戦争を「支持する」は39%、「支持しない」は58%。「支持しない」は先月調査の61%からやや低下したものの、イラク問題が共和党不支持の大きな要因であることが浮き彫りになった。

イラクで勝利する勢力を問う質問では、「米国」が25%、「反政府勢力」が12%となる一方、「なし」が62%と圧倒的多数を占めた。

イラクのフセイン元大統領が米同時多発テロに直接関与していたと思うかとの質問に対しては、「思う」が43%、「思わない」が52%。イラク戦争と米国が主導する対テロ戦争の関連については、「つながりがある」は45%、「ない」は53%だった。

CNNの記事ではこの調査はイラク問題が共和党の「あしかせ」となるだろうと分析しているが、イラク問題は共和党候補にとってあしかせにも有力な武器にもなりうる。これはアメリカ国民がイラクの情勢が良くなっていると思うかどうか、そしてイラク戦争と国内のテロ対策とどういう関係があると考えるのかに寄るのである。

変ないいかたではあるが、これは国民の持つ「印象」であって、事実関係とは必ずしも直接関係ない。

先ず、イラク情勢は一般国民が感じているほど悪い状態ではない。民主党はブッシュ大統領も共和党議会も全く出口作戦がないと攻める。ブッシュ大統領は最初からイラク政府が独自に治安維持ができるようになれば、連合軍は撤退できるといい続けてきた。イラク戦争が始まる前からブッシュ大統領の出口作戦は大々的に公表されており全くかわっていないのだ。もしこの期に及んで民主党がブッシュ大統領の出口作戦が理解できないというなら、いったい今までどこで油売ってたんだといいたくなる。

バグダッド地域を抜かせばイラクのほとんどの地域は比較的平穏である。そしてイラクでは少しづつではあるが区域ごとにイラク警備軍がアメリカ軍および連合軍から警備責任の引き渡しを受けてきているのである。

つい昨日もイラクの海軍と空軍の一部が連合軍から警備責任を引き渡しを受けた。これは8月のカークック地域にアメリカ軍から、7月のDhi Qar地域にイギリス軍からの引き渡しなどに続いて4つ目の引き渡しである。

連合軍によるイラク軍の訓練はゆっくりではあるが着々と進んでいる。いまやイラク軍は戦闘能力や武器装備の面でいえばアラブでは最強の部隊となった。今は兵えん(戦時の作戦を遂行するための軍需品の確保、管理、補給、表員の輸送、衛生、糧食などの供給)の訓練に力が入れられている。

問題はこうした事実が大きく取り上げられず、イラクでアメリカ兵が戦死したとか、自爆テロでイラク人が何十人も死んだとか、悲劇的な話ばかりが報道されるので、イラクでは内乱状態になっているのではないかという印象をうけてしまうのだ。

しかし主流メディアが民主党の選挙運動団であることは周知の事実であり、それに苦情をいっているだけでは共和党はこの選挙に勝つことはできない。ブッシュ政権にしても共和党議会にしても彼等の一番の落ち度は現状を国民に分かりやすく説明しないことにある。反対派の協力なキャンペーンと対抗するためにはこちら側ももっと積極的なアピールが必要である。

ここ数日のブッシュ大統領による一連の演説は国民にブッシュ政権がどのようにテロに取り組んでいるか、アメリカの安全を守るためにどれだけ努力をしているか具体的に説明するという非常に意味のあるものである。ブッシュ大統領だけでなく、共和党候補者たちはなぜイラク戦争が大切なのか投票者に分かりやすく説明すべきだ。戦争が不人気だからといって戦争やブッシュ大統領から距離をおくような選挙運動をしたらかえって信念がないようにみえて逆効果である。

自分らの意見に責任をもって国民を説得してほしい。

September 7, 2006, 現時間 5:46 PM

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コメント

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下記投稿者名: 田舎のダンディ

多分、アメリカ国民も悩んでいると思う。アメリカだって、国益第一の戦略でやってきたことは間違いないと思うが、自由世界の覇者として、世界の警察意識があり、何事も世界にとって良かれと思ってやってきたと、どちらかと言えばアメリカびいきの私は思っている。

政権を担っていない民主党は、今は何でも言える立場だ。ただ、それにしてもアメリカの情報収集能力や判断力は、本当に最後まで信頼してもいいのかと思うほど心配だ。小泉首相が、最後までアメリカを批判せず、大量破壊兵器が見つからない事を弁護する珍妙な論理を展開したが、きっとブッシュ大統領は心の中で感謝していると思う。

いま劣勢な世論の中で、ブッシュ大統領の主張の正当性は弱まっているが、では、どんな選択肢があったのか。イラクのフセイン大統領の非人道的な政治と危険な戦略を他国の事として放置し、同時に、アメリカの権益が侵されそうになっている事態を、指をくわえて見ているべきだったのか。もちろん、日本国民は関心すら持たなかった。

いずれにしても、いま現在、イラクで起こっていることはイラク国民自身の問題だ。イラクが自治能力を発揮するかどうか、イラク自身が自由に選択できるのだ。何でも、いつまでも誰かが悪い、相手が悪いと言い続けるなら、結局イスラム教とその指導者が悪いと言わざるを得ない。

ただ、長期に振り返ってみると、アメリカはいつも、その時々の都合で敵味方が引っくり返っている。膨大な金と人員をつぎ込んで、情報収集し、行動し、その割に何もしない方が良かったと言われたら立つ瀬がない。もう一度過去の対応も含めて、戦略、戦術の見直しをして欲しい。

現在だって、日本に毅然としてほしいのか、軟弱にして欲しいのか、強い国家になってほしいのか、弱いままでいてほしいのか一向に分からない。

上記投稿者名: 田舎のダンディ Author Profile Page 日付 September 8, 2006 4:00 PM

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