August 8, 2006

イランが攻める時、8月22日の意味するもの

冷戦の頃、東側の共産圏と西側の自由主義圏が互いに核兵器を保持していながら核戦争をしなかった理由は、互いの核兵器が互いの抑止力として働いていたからだ。どちらかが核兵器を使用すれば相手からの報復は免れない。そうなればお互いの国家が滅びることを双方が承知していたのである。パキスタンとインドの核兵器が互いの抑止力として働いているのも同じ理屈だ。文明社会は戦争をやってもその結果として生き残りたいという欲望がある。その存続への願望が核戦争による自滅をこれまで防いできたのである。

ところがイランにはそのような抑止力は全く効果がない。なぜならばイラン政府が代表するイスラマジハーディストにとって死ぬことは単なる昇進であり、殉教者として天国での地位を保証される名誉なのである。だからイスラム過激派が同胞の犠牲を顧みずに我々文明人からすれば野蛮で卑劣な非戦闘員を巻き添えにする攻撃を奨励するのは、イスラム教徒がインファデル(非信仰者)を殺す過程で殉職することはイスラム教徒にとって誇り高い運命であると本気で考えるからなのである。

イランのリーダーたちは、その最高地位にあたるアヤトラ·アリ·コメーニから統治者のムラーたち、そしてアクマデイネジャド大統領にいたるまで、善対悪の天地を分ける最終戦争が必ず来ると信じている。ここでいう善とは無論イスラムジハーディストであり、悪とはアメリカやイスラエルが代表するインファデル=非信仰者のことである。この戦争によってジハーディストたちはインファデルに追いつめられるが、その存続が危うくなったその時こそアラーの神が世界から隠してきた、12番目のイマムがこの世についにその姿をあらわし、このモハメッド·アル·マフディが自ら軍を率いて非信仰者を滅ぼす。そしてこの世はイスラム教徒だけのパラダイスとなると信じているのだ。

このような黙示禄論は別に他の宗教のそれと比べて特にばかばかしいものでもない。だがひとつだけ違うのはこの黙示禄信者たちには陸軍があり、空軍がり、ミサイルがあり、核兵器すらも持とうとしている点である。そして我々にとって心配なのはイランの統治者たちがこの最終戦争が差しせまっていると考えていることなのである。

イスラム教の研究学者として世界で一番知識のあるとされるバーナード·ルイス教授がウォールストリートジャーナルにおいて、その運命の日は来る8月22日であると書いている。(カカシ注:WSJの記事や有料なので、ここでは一部を抜粋して訳すことにする。)

8月22日にどのような特別な意味があるのだろうか? 今年の8月22日はイスラムカレンダーにおいて1427年、ラジャブの月は27日にあたる。この日は予言者モハメッドが羽のついた馬バラクに乗って「いちばい遠くのモスク」というイスラエルにあるとする聖廟へ飛び、そこから天国へいってかえってきたとされる日で、多くにイスラム教徒が伝統的に記念日として祝う。

この日がイスラエルの終わり、必要ならば世界の終わりを告げる最終戦争の期日として適切であると判断されるかもしれない。アクマヂネジャド氏がそのような大変動を起こす事件を8月22日ぴったりに計画しているのかは不明だが、この可能性を考慮にいれておくことは懸命である...

この文脈において冷戦時代に機能した相互破壊の論は意味がない。どっちにしても最終的には全面的破壊は避けられない。大事なのは死後におけるインファデルには地獄、信者には天国という最終到着地だけなのだ。このような信仰を持つ人々にとって相互破壊は抑止力になるどころか促進力となるのだ。

ではいったい8月22日に、イランはなにをするつもりなのだろうか? イランが核兵器開発に力をいれていることは確かだが、まだイランに核兵器があると考えるひとはいない。だがイランには性能の高い長距離ミサイルは存在するわけで、弾頭につめこめる武器は核兵器だけとは限らない。だとしたら、イランは8月22日にイスラエルへの攻撃をはじめるつもりであろうか? もしイランがイスラエルを攻めたら、アメリカはどうするのだろう? 世界はどうするのだろう?

黙示禄は本当になるのだろうか? そうならないことを神に祈ろう、信者の死を奨励する神ではなく生を重んじる神に。

August 8, 2006, 現時間 8:38 PM

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