グランドキャニオン旅行

苺畑カカシ著

第七話: ラバ乗り

苺夫婦がハイキングをはじめる前、私たちはラバ乗りのツアーを予約していました。このツアーはラバに乗ってブライトエンジェルトレイルの半分のところにあるプラトーポイントまで降りていき、そこで昼食をすませてまた引き返してくるという一日のコースです。しかし、ラバが背中に乗せて歩ける重量には制限があり、最高でも200パウンド、キログラムになおすとおよそ91kgまでです。

ミスター苺はちょっと太り気味。ツアーの予約をした時の体重は完全オーバー。でも数日間はハイキングをすればやせるかもしれない、ということでツアー前日までに体重を落とせれば参加可能だといわれていました。

はたして、ミスター苺はラバに乗る体重制限テストにうかったでしょうか? 

ミスター苺はハイキングの後、すぐにトイレに行き、水も飲まずそのまま体重測定をした結果、201lb(91.2kg)。でもその努力を買ってもらって無事合格!!!!

翌日朝7時半、ラバにのってプラトーポイントへ出発。誰かがラバに乗るのはハイキングより大変だと言ってました。内股の筋肉をかなり使うので、なれていないとしんどいことは確かですが、いくらなんでも歩くより大変などということはありません。でも6時間もラバの背中に乗っているのはつかれます。

ひとり初老の男性が元気な若い奥さんにつきあってツアーに参加していましたが、まるでジャガイモがたくさん入った藁袋みたいに、ぐてっとラバに座ってました。ラバは怠慢なので時々鞭で打たないと文字どおり道草を食って歩こうとしません。それで遅れを取ると前のラバに追い付こうとして走るのできちんと乗っていないとお尻がピンポン球のようにラバの背中とにぶつかってかなり痛い目にあいます。かわいそうにこの男性、なんどもピンポン球のようにラバのうえではねていました。

私の乗ったラバは崖道の端を歩きたがるので恐ろしいったらなかったです。でも自分の足下を気にしながら歩いているときとちがってすばらしい景色をみる余裕があり、峡谷を見上げながらのラバの旅も結構おつなもんでした。

ところでこの日のグランドキャニオンは数日前とはうってかわって肌寒く、空はどんより曇っていまにも雨が降りそうでした。先日あまりの暑さで死にそうになったとは信じられないような天気です。中腹の平たんな場所にさしかかると、突然ヒョウに降られました。私たち一行は用意されていた黄色のレインコートを着て岩穴のなかで雨宿り。そこでツアーが用意してくれたお弁当を広げて食べました。お弁当はクラッカーとチーズにサラミ。果物はりんご。こういう時にはおにぎりが食べたくなりますね。

我々がやすんだプラトーポイントは、この間クリアクリークへ行く途中でバテタ場所の継続したところです。峡谷の真ん中にあるお盆のような場所で、まわり中ごろごろの石ころだらけの平野です。植物といえるものはサボテンというよりからからに乾いた灌木だけ。本当に荒野ですね。こんなところに人間がすめるとは思えないですが、それでもホピ族のインディアンがすんでいたというのですから、人間の生命力には感動します。

私たちの乗ったラバツアーは途中までの日帰りコースでしたが、コロラド河までおりる一泊二日のコースもあります。その場合はファンタムロッジに泊まることができるため、荷物はほとんど必要ありません。歩くのは大変だけどコロラド河までおりてみたいと思われる方には、好都合のツアーかもしれませんね。ただし馬に乗るのになれていないとちょっときついですよ。

ラバツアーが終わり、ラバからおりようとしたら、私の足は完全に、がに股になっていてまっすぐになりません。ラバから一人ではおりられず、係のおじさんが担いで下ろしてくれました。その後もがに股でジョン ウェインさながらの歩き方になっていたら、近くを通った人に「2〜3日は足がのびないよ」とからかわれました。

第七話 終