グランドキャニオン旅行

苺畑カカシ著

第六話:ハイクアウト

この日は予定どおり朝5時45分、コロラド河のほとりから出発。あつくなっても大丈夫なように河の冷たい水でシャツをびしょびしょに濡らしてそれをそのまま来てハイキングをはじめました。

ブライトエンジェルトレイルはグランドキャニオンのなかでも一番簡単なコースなので人気もあり、出発時も何組ものハイカーと一緒になりました。途中7.25kmのところにあるインデイアンガーデンというキャンプ場についたのがまだ9時前。ここにも小川が流れておりとっても気持のいい休憩所です。

その後少し上りが急になりますが、2.5kmごとに休憩所があるので比較的楽です。もっとも他に比べればという意味です。グランドキャニオンに「楽」なハイキングコースなどありませんから。

このコースで一番きついのは、最後の3kmです。この辺まで来るとハイカー達はすでに6時間から8時間のハイクをしてきているわけで、物凄く疲れています。しかも標高が高くなるに従って空気も薄くなってくる。

前にも申し上げた通り、このコースはツアーの観光客でにぎわうブライトエンジェルロッジホテルの前から始まります。頂上まであと1〜2kmというところまで来ると、散歩気分の観光客が結構歩いていました。それはそれでいいのですが、団体ツアーの観光客はマナーがなってない。登りハイカーに道の優先権があるのは常識なのに、団体観光客は群れになって道のまん中をどんどんおりてきてハイカーの邪魔になっていることなど全くおかまい無し。あんまりその態度がひどいので私は頭に来て、「登りハイカーが先です! どいてどいて!」と持っていたハイク用の杖を振り回すと観光客はこぞって崖の外側によけるのです。それで私は「壁側、壁側!」と怒鳴るはめになりました。 

グループに遅れを取ったと思ったのか、日本人の18〜9歳の女の子が私を外側から何も言わずに追いこして(追いこすときは後ろから声をかけるのが礼儀)私の杖を蹴ったので私はバランスを失いもう少しで転ぶところでした。このコースは比較的やさしいといっても崖っぷちにあるコース。ここから落ちたら死は間違い無し。いくら観光地だからといってデズニーランドの気分でいたら物凄く危険なのです。

この女の子に「ちょっとあんた!」というとこの子振り向いて手で口をかくしクスっと笑いました。日本人の仕種では一応謝っているつもりなのはわかるのですが、日本人以外のひとにしてみたら、この仕種はばかにされているみたいで物凄く腹が立つ。私はわかってるつもりだったけどムカっとしました。皆さんも外国にいったらこういう笑い方は絶対避けてね。喧嘩になりかねませんから。

その後も日本人の団体がハイカーが休むのに最適な岩をぶんどっていたり、写真を取るからといってハイカーに待つように合図したりしてるのをみて私はカッとなり「あんたらを待ってる余裕なんかない」とどんどんカメラのまえを通り過ぎました。私の後ろから続いていた 何人かのハイカー達もそうだそうだといいたげに通り過ぎました。全く無神経にもほどがあります!

頂上まで後一歩というところでまたまた日本人の団体がおりてきました。私は大声で日本語で「壁側によってください! 登る人がさきです!」と怒鳴りながらやっと頂上にたどり着きました。コースの終わりはホテルの真ん前です。私はをれをみて喜びのあまり感嘆の声をあげました。「ゴミ箱! ゴミ箱がある〜!」

15km8時間のハイクでした。

第六話 終